Skip to main content
2025年6月15日20時35分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
背徳の街のマリヤ

続・背徳の街のマリヤ~神の花嫁~(5)猫楽街 星野ひかり

2019年11月29日19時00分 コラムニスト : 星野ひかり
  • ツイート
印刷

その街のうわさを、サダ姉は以前から聞いていました。「その街は、神を信じる、現実逃避の愚か者たちが身を寄せ合って暮らしていて、一様に貧しく苦しんでいるのに一向に神の助けも来ないバカげた街」と。それが「猫楽街」のはずでした。

しかしどうしたことでしょうか。この街の人たちは、確かに貧しくはありますが、よく笑い、信頼しあい、愛深い暮らしをしていたのです。

おばあちゃんはサダ姉を、街の至る所で開かれている「愛餐会」に連れてゆきました。「愛餐会」とは、この街で言うお食事会で、皆が台所にあるわずかな食べ物を持ち寄って、それを分け合って食べる席のことでした。持ってくる食べ物のない者は、野花を摘んでそれをテーブルに飾りました。この街では血のつながっていない相手であっても「兄弟」「姉妹」と呼び合って、本当の家族のように思いあい、支えあっていたのです。全員で、聖書の言葉を口に出し、その言葉の一つ一つを心から喜んでおりました。

「このような人は流れのほとりに植えられた木の時が来ると実を結び、その葉もしぼまないように、そのなすところは皆栄える」(詩篇1:3)

「御霊の実は、愛、喜び、平和、寛容、慈愛、善意、忠実、柔和である」(ガラテヤ5:22)

皆、聖書の言葉を命そのもののであるように、愛おしく口にしました。

「わたしは貧に処する道を知っており、富におる道も知っている。わたしは、飽くことにも飢えることにも、富むことにも乏しいことにも、ありとあらゆる境遇に処する秘けつを心得ている」(ピリピ4:12)

「わたしの神は、ご自身の栄光の富の中から、あなたがたのいっさいの必要を、キリスト・イエスにあって満たして下さるであろう」(ピリピ4:19)

その言葉は、慰めや励ましなどではなく、真理としての力を持っていました。皆の顔の輝きが、それを証明していました。その食卓で出されたものは、キュウリの酢漬けと固いパン一つでありました。その、わずかばかりの食事を誰もが心から神に感謝して、神から与えられたものとして、喜びのうちに食べたのです。

サダ姉はこんなに質素な食事をしたことはなかったはずでした。しかし、サダ姉は固いパンをかみしめながら、こんなにぜいたくな食事をしたことがないような気がしました。サダ姉は、初めて「本当の食べ物」を食べたような気がしました。食物とは神から出、霊を育て得るものであったことに気付いたのです。

会の終わりに、皆がサダ姉の紹介を求めました。おばあちゃんは自慢げに「いろいろな苦労をして、ようやくこの街にたどりついた、サダちゃんだ。本当に心の優しい子だから、みんな仲良くしておくれ」と言いました。誰もがサダ姉に親愛のまなざしを向け、サダ姉と話したそうにしておりました。

サダ姉は、自分の姿を恥じて深いベールをかぶっておりました。しかし、この席にいる「兄弟」「姉妹」たちは、サダ姉の本当の姿を見ても受け入れてくれるような希望がひらめきました。己を恥じてベールを深くかぶっていることのほうが、恥ずかしいことのように思えたのです。

しかしすぐに、「そんなわけはない」とその思いは打ち消されました。「このやけどを見たならば、私の歩んできた道のひどさを悟って、皆が私を嫌うだろう」。サダ姉は、おばあちゃんをせっついて、早々に席を立ちました。

通りに出て、病院へと向かう道すがら、「ごきげんよう」「体調はいかが?」とすれ違う人は皆声を掛け合っておりました。サダ姉にも「よろしくね」「ようこそ」と親愛のあいさつが向けられます。サダ姉は返事もろくにできないで、うつむいたまま早足で病院へと向かいました。おばあちゃんは半分駆け足になってついてゆかなければなりませんでした。

サダ姉は、病院で洗濯と食器洗いの仕事を始めておりました。一人でできる仕事がよいと、サダ姉が選んだのです。サダ姉は、黙々と食器を洗っておりましたが、なぜか瞳から涙がこぼれては、たらいに波紋を起こすのです。サダ姉はやけどの痕の残った腕で、悔しそうに涙を拭いました。

「どうしてこんな世界があるのだ」。そう思ったのです。それはあまりにもサダ姉が生きてきた世界とはかけ離れた世界でした。祈りがあり、信頼があり、絆があり、思いあい、温かで・・・そんな世界があることを信じずに生きてきたことが悔しかったのです。そんな世界は絵本の中のたわ言だ、そう思ってきたのですから。

「お前にはこんな場所はふさわしくない」。そうささやいたのは、悪魔ではなくサダ姉自身でした。「私は悪魔の花嫁が似合ってる。こんな所で本当の姿を隠しながら、ほほ笑み合うことなんて・・・」。そう言って涙を絞りました。それでもキュッキュと食器を洗い続けました。自分が化け物のような気がしました。あれほどにおぞましい道を歩んできたというのに、何食わぬ顔で正体を隠し、こんな所に紛れ込んでいるのだから、と。

その晩、真夜中の深みの中で、サダ姉はベッドを抜け出しました。向かったのは病院の屋上でした。屋上では、取り込まれ忘れた洗濯物が風にはためいておりました。サダ姉は屋上の柵に手をかけて、悪魔を呼びました。「助けて。私はこんな所にいたくないの」

空は途端によどみ、紫色の雲が押し寄せて雲の中から声が響きました。「だったら簡単なことだ。そこから飛び降りるがよい」。そうサダ姉を誘いました。サダ姉にとって、死は友達のようなものでした。「つらくなったらいつでもおいで」「いつでもここに逃げておいで」「簡単だよ」・・・。それこそ悪魔のささやきであったことにサダ姉は気付かずにきましたが、今それを悟りました。

サダ姉は柵にかける手をゆっくりと離しました。「どうしてそんなに私の命が欲しいの?」そう力なく聞きました。紫色の雲は音を立ててうなりました。「お前が欲しい、それは愛しているからだ」

サダ姉はイエス様の言った言葉を思い出しました。「わたしが与える水を飲む者は、いつまでも、かわくことがないばかりか、わたしが与える水は、その人のうちで泉となり、永遠の命に至る水が、わきあがるであろう・・・」(ヨハネ4:14)

それはイエス様が不毛な愛に身をやつした、サマリヤの女におっしゃった言葉です。サダ姉は、「愛とは命を与えるものと聞いたわ」と悪魔に伝えると、とぼとぼと自分の部屋に戻りました。

ベッドに身を横たえると、サイドテーブルに置いてある聖書をじっと見つめました。そしてだるそうに手に取ると、「サマリヤの女」の箇所を開きました。

(イエス様はその女の恥ずかしい過去もすべて見抜いた上で、彼女を軽蔑したり嫌ったりはなさらなかった。それどころか慈しみのまなざしで、彼女にまで惜しみなく「神の奥義」を語り、ご自身の民に加えてくださった。)

・・・涙がつつ、と流れました。サダ姉の口から、祈りが漏れました。「わたしのためにひそかに設けた網からわたしを取り出してください。あなたはわたしの避け所です」(詩編31:4)

<<前回へ     次回へ>>

◇

星野ひかり(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。2018年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。

■ 星野ひかりフェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
  • ツイート

関連記事

  • 続・背徳の街のマリヤ~神の花嫁~(4)十字架の門 星野ひかり

  • 続・背徳の街のマリヤ~神の花嫁~(3)光の道の始まり 星野ひかり

  • 続・背徳の街のマリヤ~神の花嫁~(2)私たちの武器 星野ひかり

  • 続・背徳の街のマリヤ~神の花嫁~(1)ま白い光 星野ひかり

  • 続・背徳の街のマリヤ~悪魔の花嫁~(最終回)真白い花嫁 星野ひかり

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • コヘレトの言葉(伝道者の書)を読む(5)時の賛歌 臼田宣弘

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(224)音楽が支える聖霊による祈り 広田信也

  • ワールドミッションレポート(6月14日):スイス 信仰で買ったトラクター、ローレン・カニングハムとYWAMに託された農場の奇跡

  • ワールドミッションレポート(6月15日):ベラルーシのために祈ろう

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • ワールドミッションレポート(6月12日):ベルギーのために祈ろう

  • 花嫁(27)絶えず喜んでいなさい 星野ひかり

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • ウォルター・ブルッゲマン氏死去、92歳 現代米国を代表する旧約聖書学者

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • フランクリン・グラハム氏、ゼレンスキー大統領と面会 和平求め祈り

  • 淀橋教会、峯野龍弘主管牧師が引退し元老牧師に 新主管牧師は金聖燮副牧師

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.