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はっつぁんとかおる姫

はっつぁんとかおる姫(最終回)真っ白な世界 星野ひかり

2018年12月30日21時49分 コラムニスト : 星野ひかり
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光のまぶしさに目を覚ましました。まぶたの裏が焼けつくような、強烈な光でした。太陽の光が雪に反射して、真夏のようにまぶしい朝が来ておりました。

寝ぼけ眼のまま、コートを羽織り、ポケットにお財布を入れ、長靴を履いて外に出ました。公園に行かなきゃ、はっつぁんのいる公園に。それだけを目指して、一面の銀世界を一歩一歩踏みしめました。白く染まった木の枝から、鳥がさえずり飛び立った姿がまぶしく焼き付きました。

駅に着く頃には、足はくたくたでズボンの裾はびしょ濡れでした。改札の前では駅員さんが拡声器を持ち、積雪のため、電車が遅れているとアナウンスをしています。心に浮かぶのは、雪の中で体を火照らせるはっつぁんの姿です。ズボンの裾を絞って、遅々として来ない電車を待ちました。

ホームには徐々に人が連なって、階段にまで行列が出来ておりました。皆、携帯を見ながらいら立ちを隠せずにいます。ようやく来た列車に、押し合いながら乗り込みました。いつもはガラガラの電車も、今日はようやく立っていられるほどです。電車が動き出すと、どこからともなく安どのため息が聞こえました。

電車を降りると、はっつぁんの公園を目指して歩きました。この街は、誰も起きている人などいないように静まり返っておりました。時折家から人が出てきて、雪に染まった町をまぶしそうに眺めては家の中に戻っていきます。

公園は、深い雪の中に埋まっていました。突然、誰一人人のいない世界に迷い込んだかのような錯覚に陥りました。人の気配のしない代わりに、雪や、花たちがきらめいて、小さな動物や虫たちの息づかいも聞こえるようです。

真っ白な世界に立ちすくみ、かおるは辺りを見渡しました。そこはまるで聖域でした。雪に埋もれた木々から差す木漏れ日は、神様の御手のようでした。雪をかぶって赤く映える椿が、誇らしくきらめいておりました。

「いらっしゃい」。かすかな声に振り向くと、椿が笑ったような気がしました。木立の間、光の御手の陽だまりに、はっつぁんの姿を見つけました。

優しいほほ笑みで、小鳥のさえずりを喜んで、光に体を温められてうれしそうにしております。仲良しの小鳥が、はっつぁんの姿に喜んで、チィチィとさえずります。ぼさぼさ頭の野良猫も、はっつぁんにすり寄り、愛撫をねだります。まるで、花や木々の緑も、はっつぁんのために咲き、芽吹いているかのようでした。

「はっつぁん・・・」。かおるは、自分が今まで、とても小さな囲いの中で生きてきたような気がしました。それは、社会や常識で築き上げた檻でした。はっつぁんは、そんな檻とは違うところで、ずっと自由に、こうやって生きていたことを見たようでした。

はっつぁんはかおるに気付くと、困ったような顔をしてほほ笑みました。かおるも照れるように笑いながら、はっつぁんのそばに近づき、雪の中、はっつぁんの隣に腰掛けました。

突然、遠くから音楽が聞こえてくるような気がしました。それは光のさざめきの音や、水面の波紋や、木々が枝をしならせる音や、鳥たちが飛び立つ音で出来ている音楽でした。そしてはっつぁんが、その音楽に合わせてハミングをしていることに気付きました。

はっつぁんの見つめていた光を見上げました。そこは、まぶしすぎる白の世界でした。真白く輝く天から、神様の愛が流れ出て、この世界に、はっつぁんに、そしてかおるに惜しみなく注いでいることを目にしました。

その愛は、まったき愛でしかありませんでした。細々とした文句や、小さな条件など一つもない、ただまったき愛でした。心に抱えていた小さなわだかまりの積み重なりや、小さな傷跡の積み重なりや、憎しみや言い訳の積み重なりが、雪のようにじんわりと溶けていくのを感じていました。

生きていることが素晴らしいことで、私たちはただ愛されていることを知りました。そして、その愛は、イエス様の十字架に完全に表れていることを知りました。神様は本当に私たちを「愛しているから」、イエス様をお与えになった。そしてイエス様も、私たちを「愛しているから」、十字架にかかられた。私たちの深い罪を憐れんで、罪に戯れる幼子を抱き上げて、みもとに引き寄せるように、ご自身の命を与えられた・・・。

聖書を読んで、知っていたつもりでいたことを、心に触れるように理解しました。自分はなんて罪深かったのだろう、と思いました。こんな愛から顔を背けて、自分の考え、自分の気持ちを握りしめて、神様の愛を受けようともしないのですから。神様はただ、与えたいお方であり、受け取らないことを「罪」と名付けたのでしょう。私たちは神様の「愛したい」ものなのですから。

はっつぁんを見ると、はっつぁんもかおるを見てほほ笑みました。顔の赤いはっつぁんは、やっぱり熱があるのかもしれません。でもかおるは、たとえそうであっても恐ろしくないなと思いました。病も、老いも・・・いつか私たちが天に召されたとしても、それはひとつも恐ろしいことではないと、思えたのです。神様はただ、与え続ける存在です。それがたとえ、死であっても・・・。

突然、目に映る情景がすべて、細かな粒子で出来ているような気がしました。雪に埋もれた花や草、光の帯も、その色の一粒一粒まで見える気がするのです。粒子の一粒一粒は、世界そのものを映すように、多様な色で輝いていました。

天から差す、真白き光は、神様の輪郭を表すよう。私たちは、ただ愛によって、命の粒子を交換し合い、ここには老いや死も訪れないような気がしました。・・・それはまるで、エデンの記憶が呼び覚まされるようでした。私たちの命の奥底には、エデンの記憶があり、ですから私たちは永遠を覚えており、そして神様を知っているのかもしれません。

はっつぁんのハミングがやみました。かおるはゆっくりとはっつぁんのほうを見ました。「はっつぁん」と呼びかけたとき、そこにはっつぁんの姿はありませんでした。はっつぁんの座っていたはずの場所は、雪が積もったままで、まるであとかたもなく、はっつぁんは消えていたのです。

かおるは目を丸くして、はっつぁんを探しました。「はっつぁん!」「はっつぁん!」。雪を踏みしめ、よろけながら歩きました。すると、公衆トイレの裏のベンチの上に、かおるの渡した水筒が、立てかけてありました。ゆすると、中身は空っぽでした。「はっつぁん!」。かおるはありったけの声で叫びました。声は雪に吸い込まれるかのように、すぐに静寂が広がりました。

なぜか、涙がこぼれました。はっつぁんが自分には手の届かない遠くに、行ってしまったような気がしたのです。「神様、神様、はっつぁんに会わせてください」。両手を組んで祈りました。光はただ、木々のすき間から差し込んで、ゆっくり雪を温め、溶かしておりました。

かおるは毎日、アルバイトのある日も、はっつぁんを訪ねて公園に足を運びました。しかし、はっつぁんに会えることはありませんでした。

教会で、一緒に炊き出しをした先輩から、「大雪の日に死んだ人がいるらしい」と聞きました。もしかしたらそれは、はっつぁんであるかもしれないし、はっつぁんではないかもしれません。どちらにせよはっつぁんは、あの白い光の中で、小鳥や木々や花、猫たちと共にいるような気がしました。あの白い光の世界、神様の愛をまっすぐに感じた世界、そこにはっつぁんは今もいる・・・。そんな予感が、はっつぁんのいない不安や寂しさを和らげてくれました。

*

かおるは、はっつぁんにいろいろなスープを作っていた、あの平安で満ち足りた気持ちで台所に立っていました。じゃがいもとニンジン、白滝と豚肉を煮込んで、肉じゃがを作っているのです。はっつぁんの公園を今日も訪ねて、はっつぁんが今日もいなかったら、その足で実家に行って、お父さんが食べるように、玄関のドアにかけておこうと思っています。

昨日不思議な夢を見ました。幼い自分がブランコをこいでいると、お父さんが満面の笑みで背中を押しているのです。「かおる姫、もっと高くこげ!」。お父さんはとっても幸せそうで、全身でかおるを愛していました。

目覚めると、小さい頃に父親に「かおる姫」なんて呼ばれていたことを思い出しました。「姫だったんだ」。お父さんの姫。・・・そんな時があった。そしてかおるは顔を覆って、さめざめと泣いたのです。

・・・ゆるせない思いや自分への言い訳、そんなものを抱え込んだ私たちは、それでも一歩一歩を歩みます。悲しいほどに、小さな一歩を積み重ねて、一日、一年を過ごします。

「一歩」。それはとてもしんどく大変なものもあるでしょう。何年もかけてようやく踏み出せる一歩もあるでしょう。それでも神様はその「一歩一歩」を、心のゆらぎの隅々まで見守ってくださるお方です。そして、かおるは確信しておりました。その一歩一歩の先に、はっつぁんと座った白の世界があることを。

真白き光のような御手の中で、はっつぁんと話したいことがたくさんあります。神様のこと、自分のこと、はっつぁんの歩んだ人生について。その一歩一歩の隅々まで。(おわり)

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◇

星野ひかり(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。2018年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。

■ 星野ひかりフェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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