イエス・キリストに魅了された人(2)死の床から、いのちとビジョンへ 井原博子

2014年10月27日16時14分 コラムニスト : 井原博子 印刷
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終戦間もない頃、中川義雄さんは病院のベッドにいた。見込みのない重症の結核患者を入れる部屋。そこに運ばれることは、死を意味していた。

戦争に行き、かろうじて生きて帰ってきたと思ったら、死病である。妻もこの病を恐れ、実家へ逃げ帰ってしまった。

中川さんは、しみだらけの汚い壁や天井を見て、毎日泣いていた。

そんなある日、部屋が明るくなったように思えた。見知らぬ外国人が入ってきたのだ。そのキリスト教宣教師は、「イエス・キリスト様は、神の子ですが人となり、十字架で死なれ、三日目に復活しました。それは、あなたを愛して罪をゆるし、天国へ迎えたいからです。もしあなたが今死なないで生かされても、イエス様は、あなたといつもいっしょにいてくださいます」と、神の愛を語った。

その時、中川さんが不幸のどん底にいたから心動かされたのではない。神様が彼を選び、見いだされたのである。中川さんは、妻にさえ見捨てられた自分を神は愛して下さっていると知り、イエス・キリストを信じてクリスチャンになった。

「それからは、汚い病室がとてもきれいに見えた。今度はうれしいて、毎日泣いとった」。間もなく結核はいやされた。その病室から生きて出たとは奇跡だと言われた。

中川さんは、自分を救い病気を治してくださったイエス・キリストを礼拝するため、毎週教会へ通い始めた。

ある日、教会の友人を見舞った先で、カズ子というクリスチャン女性と出会った。彼女も戦争などで夫と子どもを失い、肺結核を病んだという経歴を持つ。二人は祈り、お互い神の導きを確信し、結婚した。

新しいスタートを切った中川さんの心には、「故郷の津島町岩松に教会を」という願いがいつもあった。しかし神の御心かどうかわからず祈っていた。

ある夜、教会のキャンプファイアーを囲んでいた時、リーダーが言った。

「みなさん、祈っていることを紙に書いてこの火の中に入れましょう!」

中川さんが書いたのは、もちろん、「岩松に教会を」。「その紙を火にくべたとき、ばあん!と心に平安が来た。腹の底の底まで平安に満たされた」と中川さんは語る。岩松に教会を建てることはみこころだと確信した。そのためには資金がいる。祈って、衣料品の商いを行商から始めることにした。

周囲は猛反対である。

「あんたみたいに正直な人、商売したらすぐにだまされるで」

励ましたのはカズ子夫人だった。

「世界中の人が反対しても、イエス様がしなさいとおっしゃるなら、しましょう」

この時から中川さんのおのろけが始まる。

「わしゃ、最高の妻をもろた」

「世界一の妻!」

ちょっと親しくなると、だれにでもこれを言う。中川さんは私の母教会にもよく訪ねてきていたらしい。母教会には未亡人が多かったが、その半数が中川さんののろけの被害者である。しかし、あまりに手放しだったのでみんなあほらしく、やっかむ人はいなかった。

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井原博子(いはら・ひろこ)

1955年、愛媛県伊予三島(現四国中央市)生まれ。大学入試に大失敗し、これだけは嫌だと思っていた「地元で就職」の道をたどる羽目に。泣く泣く入社した会社の本棚にあった三浦綾子の『道ありき』を読み、強い力に引き寄せられるようにして近くのキリスト教会に導かれ、間もなく洗礼を受けた。「イエス様のために働きたい」という思いが4年がかりで育ち、東京基督教短期大学に入学。卒業後は信徒伝道者として働き、当時京都にあった宣教師訓練センターでの訓練と学びを経て、88年に結婚。二人の息子を授かる。現在は、四国中央市にある土居キリスト教会で協力牧師として働き、牧師、主婦、母親として奔走する日々を送る。趣味は書くこと。

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