イエス・キリストに魅了された人(1)津島町の名物 井原博子

2014年10月17日07時23分 コラムニスト : 井原博子 印刷
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津島町の名物

昔、愛媛県の西の端で、高知県との境目あたりの町に、中川衣料品店というお店があった。そこの店長、中川義雄さんは、毎年4月が近づくと、新入りのパートを捕まえて尋ねる。

「○○はん、あんた、字ぃ、上手そうななあ。習字、できるんな?」

聞かれた店員は、古い店員から教えられている通りに答えた。

「すいません、下手なんです」

店長、今年も、「ほ~な~」とがっくりきて、店の入り口の畳コーナーに上がり、墨を摺り始める。無愛想な顔をもっと渋くして半紙に向かい、『清家』『中川』『山本』などという姓を練習している。

新入りが、乱れた商品を畳んだりきちんと並べなおしたりしていると、古い店員が耳打ちしてきた。

「な、やっぱり言うた通りだったろ?」
「ほんでも・・・悪いなぁ」
「えんよ、毎年のことよ。あ、やっぱり練習しよる、しよる」

中川衣料品店は、制服取扱店である。春休みともなれば、入学を控えた生徒たちが親に連れられて来店し、ごったがえす。店長が練習しているのは、生徒たちの胸を飾る名札だった。

その名札の字を書くのが中川店長は苦手で、4月になると、新入りの店員に「習字習いに行く費用出してもええけん」引き受けて欲しいと思うのだが、みんな逃げた。

愛媛県松山空港からハイウェイに乗って、宇和島方面へ車を走らせること約一時間半、宇和島を過ぎてしばらく行き岩松インターで下りて高知宿毛方面へ進路をとると、道は小さな町を流れる清流に沿って走る。

町の名は津島町。川は岩松川。リアス式の海にそそぐ。

名物がある。てんやわんやの善助餅。一口サイズの柔らかい大福で、食べ始めるといくらでも入ってしまう。また、岩松川で捕れるしらうおは、シーズンには京阪神からも観光客を呼ぶ高級メニューだが、私はいただいたことがない。

観光パンフレットに紹介される名物は、この二つと真珠、みかん、新鮮な魚など。が、ぜひとも見ておきたいものがあとふたつある。冒頭に書いた中川衣料品店と、川を挟んで反対側にある岩松教会だ。

教会の方は、山の裾、田んぼの真ん中に、目を疑うような大きな建物。祈祷院として、また100人の修養会でも受け入れ可能な設備が整っている。夜には屋根の上に十字架が光り、四方から見える。

実は、お店も教会も、かの店長中川義雄さんが、神様から建てなさいと言われて建てたものなのだ。

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井原博子(いはら・ひろこ)

1955年、愛媛県伊予三島(現四国中央市)生まれ。大学入試に大失敗し、これだけは嫌だと思っていた「地元で就職」の道をたどる羽目に。泣く泣く入社した会社の本棚にあった三浦綾子の『道ありき』を読み、強い力に引き寄せられるようにして近くのキリスト教会に導かれ、間もなく洗礼を受けた。「イエス様のために働きたい」という思いが4年がかりで育ち、東京基督教短期大学に入学。卒業後は信徒伝道者として働き、当時京都にあった宣教師訓練センターでの訓練と学びを経て、88年に結婚。二人の息子を授かる。現在は、四国中央市にある土居キリスト教会で協力牧師として働き、牧師、主婦、母親として奔走する日々を送る。趣味は書くこと。

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