ユダヤ教の「過越の祭り」をクリスチャンとして祝う 京都でイベント

2018年4月2日13時37分 執筆者 : 青木保憲 印刷
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イベントに参加したゴスペルシンガーのヴァネッサ・マドックスさん=3月31日、谷川の流れ祈祷院(京都市右京区)で
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2018年3月31日土曜日。17年度最後の日に、とても意義深いイベントが京都で行われた。聖書の出エジプトに由来する「過越の祭り」をクリスチャンとして現代日本で祝おうという趣旨である。

このイベントは、04年から毎年、京都グローリーチャーチ(吉田義則牧師)が所有する「谷川の流れ祈祷院」で行われている。主催協力者の1人である日之出キリスト教会の行澤一人牧師がリードし、毎年行われる行事となっている。

そこに筆者も昨年から参加するようになった。今年はさらにその顔触れが多彩になっている。まず特筆すべきは、ユダヤ人留学生が参加して、式典では実際にヘブライ語で祈祷を読み上げたことだ。他にも、実現こそしなかったが、イスラエル大使館の関係者が参加する予定であったという。

今年このイベントに参加したゲストの中には、米国からゴスペルツアーを行うために来日していたナッシュビル在住のシンガーもいる。彼女もこのようなイベントに参加するのは初めてで、しかも日本で「過越」体験できたことに、驚きと興奮を隠せないようであった。

参加者はおおよそ60人。しかも複数の教会から集まってきているため、その交わりはとても新鮮な出会いを生み出すこととなる。

では、イベントの中身を概説しよう。まず、全員が部屋の中に集まり、そこで角笛が高らかに吹き鳴らされて開会となる。この角笛は、きちんと音が出るまでにはかなりの練習を要すると聞く。しかし、開会で鳴り響いた音色は、これからの式典を象徴するかのように、温かくも凛(りん)とした響きであった。

ユダヤ教の「過越の祭り」をクリスチャンとして祝う 京都でイベント

その後、屋外のバルコニーに用意された各テーブルに座り、そこで並べられているさまざまなアイテムの解説が行われた。テーブルには、羊の骨、クラッカーのような大きな正方形の種なしパン(マッツァ)、そして小鉢4、5個に漬物のような、ドレッシングのようなものが盛りつけられていた。

それぞれに意味があり、それが聖書の「出エジプト」の出来事を象徴するものであるというところに、この式典の奥深さを感じることができる。解説をしてくださった行澤牧師が語られた次の言葉が、とても的を射たものとなっている。

「皆さんの目の前に、羊の骨が折られないまま置かれています。これはイエス様を象徴しています。しかし皆さん気を付けてください。珍しい羊の骨に目を留めないでください。これを通してイエス様のことを思い起こしてください」

ユダヤ教の「過越の祭り」をクリスチャンとして祝う 京都でイベント

「過越の祭り」と聞くと、まるでユダヤ教にキリスト教徒が回帰したかのようなイメージを与えるだろう。しかし、このイベントを行っているのは「クリスチャン」である。そしてその中心では、常にイエス・キリストが意識されている。つまり、ユダヤ教の珍しい儀式を再現しようとか、文化論的に考察しようという視点ではなく、あくまでも新旧約聖書全体に通底する神の導きを、現代日本で生きるキリスト者として受け止めたいという信仰的な動機から、このイベントは行われているのである。

解説の後、マッツァを割り、それに大根おろしとわさびを混ぜたものを載せ、食べるよう促された。「これは、エジプトの苦役を忘れない、ということの象徴です。だから苦いものを口にするのです」とのこと。

すべてこのようなやり方で、マッツァにさまざまなものを載せて頂くことで、出エジプトを想起し、さらにクリスチャンとして、罪の世界からキリストによって救い出されたことを思い起こすことが求められる。

最後に「キリストはよみがえられ、今も生きておられる」というキリスト教的なメッセージへと移行し、イースターを祝う準備ができたところで、式典の部はお開きとなる。

ユダヤ教の「過越の祭り」をクリスチャンとして祝う 京都でイベント

再び屋内に移動し、「子羊なるイエス」「よみがえりの主」という言葉が何度も登場する賛美を共に歌うひとときへ。中には踊りながら、そして旗を振りながらこの賛美に呼応する方もおられた。後で伺うと「過越の祭り」には今回で10回目の参加だという。

ここからがユニークなのだが、筆者が「米国福音派からみたイスラエル社会」について、トランプ大統領の米国大使館移転問題を取り上げて解説する時間が持たれた。一見、過越の祭りとは関係ないような内容である。しかし、米国人(特に福音派)のイスラエルへの好意が一連の中東問題に一石を投じていることは事実である。エルサレムへの大使館移転という大きな変化の中で行われる「過越の祭り」は、今までと異なった色合いを醸し出しつつあることは、目を留めるに値することであろう。

その後、米国から来られたシンガー、ヴァネッサ・マドックスさんがゴスペルを数曲歌い上げてくれた。彼女はテキサス州出身であり、幼き頃より福音的な環境で育ったため、今回のイベント趣旨をしっかりと理解し、子羊なるイエスへ向かって感謝と賛美を皆でささげる一体感を生み出してくれた。

イスラエル問題、そしてユダヤ人に対するキリスト教の在り方は種々ある。今回レポートした内容もその1つであり、決して画一的にこれをすべき、と押し付けられるものではない。だがこのようなイベントに参加して思うのは、皆自分たちの生き方が「聖書」に基づいたものであることを確認し、さらに前に向かって歩を進めたいという真摯(しんし)な信仰者の姿が色濃く表れているな、ということである。

そういった意味で、キリスト者として「過越の祭り」を祝うことは、クリスチャンの生き方をさらに信仰的に深めることになるのではないだろうか。

本イベントは来年もイースター前の週に開催されるとのこと。もし興味があれば、ぜひ一度体験してみることをお勧めする。

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青木保憲

青木保憲(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院を卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科卒(修士)、同志社大学大学院神学研究科卒(神学博士、2011年)。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。著書に『アメリカ福音派の歴史』(2012年、明石書店)。

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