「脱原発のドイツから学ぶ」 政府決定に影響与えた倫理委員が来日講演

2018年2月28日22時13分 印刷
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講演する独ミュンヘン工科大学教授のミランダ・シュラ—ズさん=27日、聖心女子大学(東京都渋谷区)で
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東日本大震災を受け、いち早く脱原発に舵を切ったドイツ。その方向性を決めるのに大きな影響を与えたとされるのが、震災直後にドイツで設置された「安全なエネルギー供給に関する倫理委員会」だ。その委員の1人であるミランダ・シュラ—ズさん(独ミュンヘン工科大学教授)の来日講演会が27日、聖心女子大学(東京都渋谷区)で開催され、キリスト教関係者を含む300人以上が参加した。

講演会は、市民団体やNGOなど14団体で構成される実行委員会が主催。中心となったのは、愛知県の市民団体代表を務める池住義憲(よしのり)元立教大学大学院キリスト教学研究科教授ら。同研究科や日本聖公会「正義と平和委員会」原発問題委員会、CWS JAPANなど、キリスト教関係の団体も共催として参加した。

22日に来日したシュラーズさんは各地で講演し、福島第1原子力発電所がある福島県大熊町も訪問、東京では国会議員と意見交換するなどした。

米国生まれのシュラーズさんは、日本にも留学などで通算5年間滞在した経験がある。日本語で行ったこの日の講演では、ドイツが脱原発を目指すようになるまでのこの数十年の流れを説明。最初は市民らによる草の根の運動から始まったこと、また旧ソ連(現ウクライナ)のチェルノブイリ原発事故が大きな影響を与えたことなどを伝えた。

「脱原発のドイツから学ぶ」 政府決定に影響与えた倫理委員が来日講演
講演前にあいさつする市民団体「次世代の子どもたちの“いのち・くらし・エネルギー”を考える会」代表の池住義憲(よしのり)元立教大学大学院キリスト教学研究科教授

「福島の原発事故は、ドイツ人にチェルノブイリの事故を思い出させた。日本人と同じくらいショックを受けたかもしれない」。ドイツ国内の原発推進派はそれまで、チェルノブイリの事故は、技術が未熟だった旧ソ連だから起きたなどと説明してきたという。しかし、技術レベルの高い日本で大きな原発事故が発生したことは、大きな衝撃を持って受け止められたという。

シュラーズさんが委員を務めた倫理委員会は、政治家6人、学識経験者8人、その他3人の計17人で構成された。特徴は、原発の専門家や電力会社の関係者ら明らかな原発推進派や、反対に緑の党など明らかな反原発派がいなかったこと。外国人や哲学者、またプロテスタントとカトリックの聖職者も加わり、原発というエネルギー問題を、技術的、経済的な視点ではなく、あくまでも倫理面から議論した。

アンゲラ・メルケル首相が、倫理委員会の結果を受けて原発政策の方向性を決めると発言したこともあり、メディアの注目を集めた。さまざまな立場の45人にインタビューしたり、公開イベントを開催し、その模様をテレビで放送したりした。そして倫理委員会は、次の6項目を主要な結論としてまとめた。

  • 原子力発電所の安全性がいくら高いとしても、事故は起こる可能性がある。
  • 事故が発生した場合、他のどのエネルギーよりも危険。
  • 核廃棄物処理の問題などを次世代に残すのは倫理的な問題がある。
  • 原子力より安全なエネルギーがある。
  • 地球温暖化問題もあるため、化石燃料を使用することは解決策とはならない。
  • 再生可能エネルギーの普及とエネルギー効率性政策で、原子力を段階的にゼロにしていくことは、将来の経済のためにも大きな機会となる。

この倫理委員会の提言などを受け、ドイツ議会は東日本大震災発生から4カ月もたたないうちに、2022年までに原発を完全撤廃することを、8割以上の賛成多数で可決した。

「脱原発のドイツから学ぶ」 政府決定に影響与えた倫理委員が来日講演
ドイツの脱原発に影響を与えた「安全なエネルギー供給に関する倫理委員会」の委員による来日講演ということもあり、当日は300人以上が参加した。

倫理委員会は脱原発だけでなく、太陽光や風力などの再生可能エネルギーへの転換を提言している。シュラーズさんによると、ドイツ国内の全電力に占める再生可能エネルギーの割合は、1990年は約3パーセントだったが、昨年30パーセントを超えた。また、すでに100パーセントとなっている自治体もあるという。

ドイツでは、脱原発と地球温暖化対策が同時に行われているとし、それは実現可能なことだとシュラーズさんは言う。最後には、高レベル放射性廃棄物の処理場に関する組織を取り上げ、一般市民の声が反映される仕組みを取っていることを紹介。脱原発のためには、政界、産業界だけでなく、一般市民も加わった共同作業が必要だと語った。

「脱原発のドイツから学ぶ」 政府決定に影響与えた倫理委員が来日講演
トークセッションで話す映像作家の鎌仲ひとみさん(左)、シュラーズさん(中)、国際環境NGO「FoE Japan」事務局長の満田夏花さん

シュラーズさんの講演後には、映像作家の鎌仲ひとみさん、国際環境NGO「FoE Japan」事務局長の満田夏花さんを交えてのトークセッションが行われた。

日本は東日本大震災後、実質的な原発ゼロの状態を1年以上も経験した。また現在稼働中の原発は、ドイツの7基に対し、日本は4基と一歩リードしているともいえる。さらに、再生可能エネルギーの電力価格は年々下がっており、莫大な費用がかかる原発を利用する経済的利点も失われつつある。トークセッションではそうした中、なぜ日本の電力業界は脱原発にシフトできないのか疑問が出された。

脱原発をめぐる政策提言などに取り組んでいる満田さんは、「大きな利権構造はなかなか変わらないと思うが、産業界の人たちには考え方を変えつつある人がいる。確実に波は来ている」とコメント。立憲民主党が最近、原発ゼロをうたう法案を党内で承認したことなどに触れ、さまざまな形で市民側から脱原発を後押しする声を発していくことが必要だと語った。

シュラーズさんは「日本では脱原発の議論しかない」と指摘。将来を担う若者たちが希望を抱ける訴え方が必要だとし、脱原発で終わるのではなく、原発に代わる再生可能エネルギーの可能性や新しい電力制度、省エネ建築など、未来のイメージを提供していくことを勧めた。

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