成長し続ける教会の秘訣とは? 創立100周年、米ニューヨーク・ハーレムの教会の挑戦

2018年2月25日21時29分 執筆者 : 打木希瑶子 印刷
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ベテル・ゴスペル・アセンブリー教会の正面入り口。中学校の校舎を改装して使用している。そのため、いまだに教会ではなく学校と間違われこともあるという。新しい礼拝堂の入り口はこれとは別に5番街通り側にある。(写真:打木希瑶子さん提供)
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米ニューヨーク・ハーレムにあるベテル・ゴスペル・アセンブリー教会は、昨年創立100周年を迎え、この1年間、数多くの記念行事を行った。礼拝堂も700席のものの他に、新たに1800席以上の大きなものを、隣接するマンションの1階に新設。ドニー・マクラーキンやキエラ・キキ・シェアードら、米国を代表する著名なゴスペル歌手らが特別礼拝に駆け付けた。この他、ニューヨーク州知事やニューヨーク市長、マンハッタンの弁護士事務所やコロンビア大学の関係者ら、政界・教育界・法曹界・経済界・芸能界など各方面から多くの来賓が相次いで訪れた。

しかし、ハーレムにあるすべての教会がこのように成長しているわけではない。存続が危ぶまれている教会も増えている。米ニューヨーク・タイムズ紙は2010年、「存続が難しくなってきているハーレムの教会」という記事を出しているが、今、多くの教会が財政難に陥っている。日曜礼拝に参加する人数も平均30〜50人がやっとで、その8割が高齢者だという。献金だけでは教会を運営していくことが難しく、教会に来る若者が増えない限り、さらに状況は悪化する。「日曜日はドレスアップして家族みんなで教会へ」という風景は、ハーレムでも少なくなってきた。

このような状況の中、ベテル・ゴスペル・アセンブリー教会は存続が危ぶまれるどころか、ますます成長を続けてる。一体、その秘訣は何なのか。同教会のカールトン・T・ブラウン主任牧師に話を聞いた。

私たちの教会は1200人ぐらいのメンバーがいて、礼拝にも1200~1500人が毎週集まります。そのうち200〜300人は観光客です。礼拝に観光客を受け入れ始める際、私たちの中には葛藤がありました。なぜなら、観光客を受け入れたことにより、礼拝が礼拝として機能しなくなった他の教会の例が幾つもあったからです。しかし、最終的には条件を付けて受け入れることを決めました。なぜなら、「教会は自分たちのメンバーだけを救う場所ではない」という結論に達したからです。確かに観光客の多くは、私たちのゴスペル音楽を聞きに来るのが目的です。しかし、それは単にきっかけなのです。私たちの教会のメンバーや毎週のように礼拝に来る人だって、ふたを開けてみれば、神様がどんなお方なのか、実はよく分かっていない人もいるかもしれません。

クリスチャンの中で「三位一体」を正確に説明できる人がどれくらいいるでしょうか。教会に毎週来る人が、本当に心からイエスを信じているかどうかも疑問です。教会に来ればいろいろな人と出会えるし、楽しいし、教会が唯一の社交場であるという理由で来ている人もいるかもしれません。しかし、そうであっても良いのです。例えば米国という1つの国があって、その国民の知識レベルがすべて同じということはありません。国の中にはいろいろな役割があり、それぞれの役割を私たちは担っています。それと同じように「クリスチャンとして信仰を持っています」と言っても、その知識レベルは同じではなく、また役割も同じではないと思うのです。日曜礼拝に来る人たちが、観光客であろうとなかろうと、神の言葉を知る機会は平等に与えられるべきだと思います。

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ベテル・ゴスペル・アセンブリー教会のカールトン・T・ブラウン主任牧師。「ニューヨークに来たらぜひお立ち寄りください」と話す。(写真:同提供)

そもそも、私たちの教会の理念は3つのL、すなわち「A Loving, Learning, Launching Church(愛し、学び、スタートさせる教会)」でした。私たちの教会は、望むならば誰でも、愛し、学び、信仰生活をスタートできるように用意があります。カウンセリングも行っており、誰でも心の悩みを専門家に打ち明けることができます。私は教会が単に「祈りの場」だけであってはならないと思います。もっと地域や生活に密着した場所であるべきだと思うのです。社会に貢献できない教会は意味がありません。

また、毎週「どうやったら人が集まりやすいか」ということを常に考えています。音楽に力を入れているのも、その1つです。讃美歌集にある昔ながらの楽曲から、コンテンポラリー・ゴスペルまで、私たちはプロレベルの音楽を毎週、無償で提供しています。音楽を通して私たちの教会を知り、聖書を知り、神の愛を知る人はたくさんいます。ニューヨークは世界有数の観光地であり、人々が訪問したい場所はたくさんあるはずです。その中で私たちの教会に行くようにと神様が導いてくださったのです。来場を断るのは主の御心に反すると私は思います。どなたでもウェルカムの姿勢を常に持ち、また1人でも多くの人に来ていただける努力は惜しみません。

聖書勉強の時間はもちろん必要です。しかし、そうしたことだけでなく、文化的な要素やスポーツなどを取り入れたサークル的な集まりも必要だと思います。私たちの教会には音楽だけでなく、ダンスチームもあります。若い人たちが好きなヒップホップ系のダンスから、シニアの方が好きなゆったりとしたダンスまで扱っています。芝居をやっているチームもあります。小さな子連れの人たち向けに保育室も用意してあります。夏にはバーベキューをしたり、旅行に行ったり、キャンプをしたり、スーパーボウル(アメリカン・フットボールの決勝戦。視聴率は全米で50パーセントを超える)を大画面でみんなで見たりと、誰もが気軽に集まれる機会を多く持っています。教会というと煙たがる人もいますが、町の集会場やコミュニティーセンター、文化センター、スポーツジムのように気軽に集まれるような企画を考えています。

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礼拝の様子。ゴスペルシンガーやバンドによる賛美集会が毎週行われる。(写真:同提供)

聖書勉強も週1回の定期的なものから、期間限定の集中的な講座や初心者のための特別講座など、さまざまなプログラムを提供しています。「Learning(学び)」は、私たちの教会理念の柱の1つです。「洗礼を受けたからそれで終わり」という考えは違うと思います。プロの音楽家や医者、教師、弁護士、スポーツ選手など、プロフェッショナルな職業の人たちは、「資格を取ったから」「有名になったから」といって勉強や練習を怠ることはしないでしょう。クリスチャンもそれと同じだと思うのです。クリスチャンになるということは、一生勉強し、成長していくことなのだと思います。

牧師や教会スタッフはなおさら、社会状況に合わせてさまざまなことを勉強しなくてはならないし、必要な情報を集めなくてはならないと思います。家庭内暴力(DV)の問題はもちろん、住宅問題や栄養問題、健康問題、就職問題、衣服や衛生面の問題、精神的な問題など、コミュニティーの中でサポートを必要としている人はたくさんいるのです。教会はその人たちの駆け込み寺とならなくてはならないと思います。そのためには、日頃からさまざまなところと連携する必要があります。NPO団体、行政、政治家、学校、病院など、社会が複雑化しているのですから当然です。連携を取っていれば、駆け込んて来た人を的確なところにつなぐことができます。「教会は宗教活動だけをやっていればよい」という時代遅れの考え方では、教会はただの建物になってしまいます。教会は中身の活動がなくては、単なる建物にすぎません。

成長し続ける教会の秘訣とは? 創立100周年、米ニューヨーク・ハーレムの教会の挑戦
礼拝には毎週世界中から訪れる多くの観光客が参加する。(写真:同提供)

創立100周年を迎え、4つ目のLとして「Liberating (解放)」を教会理念に加えました。教会は建物ではなく、人そのものであるべきだと考えているからです。教会内での活動を支えるメンバーも必要ですが、教会外で活動するメンバーも必要です。教会に所属する一人一人が教会であるべきです。そういう意識を持てば、職場や学校、家庭、また友人との会話やSNSでのやりとりなど、さまざまなところで私たちの発言や行動が変わってくるでしょう。教会の中にいるときはクリスチャンで、教会を出たらクリスチャンでなくなるという人がたくさんいる教会は成長できません。

成長し続ける教会の秘訣とは? 創立100周年、米ニューヨーク・ハーレムの教会の挑戦
ハーレムで2人の黒人女性と聖書勉強会を始めたドイツ人女性のリリアン・クリーガンさん。マンハッタン北部に位置するハーレムは米国の黒人文化の中心地で、当時は独身の若い白人女性が1人で行くことは危険を伴った。(写真:ベテル・ゴスペル・アッセンブリー教会提供)

この教会がスタートしたのは、101年前に3人の女性が集まったことによります。ハーレムに住む黒人の少女2人がニューヨーク市内の教会に行き、一緒に聖書を勉強したいと言ったところ、肌の色を理由に仲間に入れてもらえませんでした。その教会の対応に疑問を持った1人のドイツ人女性が自らハーレムに通い、少女たちのために聖書の勉強会を開きました。建物などありません。そのドイツ人女性がまさに「教会」だったのです。この勉強会に少しずつ他の黒人も参加するようになり、翌年から勉強会だけでなく礼拝も持つようになりました。これが私たちの教会の始まりです。

100年後、こうして立派な礼拝堂が与えられました。しかし、これは私たちの新たなる挑戦です。教会が大きくなれば、どうしても保守的になります。安定を求めて変化を嫌うようになりがちです。しかし、礼拝堂が大きくなったのに守りに入るのはおかしい。大きな礼拝堂が与えられたなら、大きなことをすべきです。同じことを続けて違う結果を求めようとするのは愚かです。時代の変化に合わせた工夫が必要です。教会のメンバーたちと祈りながら、良いと思われることはどんどん取り入れる柔軟な姿勢を保ちたいです。若い人が言いたいことは堂々と発言できるような教会でありたいです。変化を恐れてはいけないと思います。またそれと同時に、この教会を創立した3人の女性たちが持っていたスピリットも忘れてはならないと思います。100年を迎えてお祝いムードになりがちですが、次の100年のことを考えて私たちは挑戦し続けなくてはならないと思います。

ベテル・ゴスペル・アセンブリー教会は、米国内だけでなく、南アフリカやジャマイカなど海外にも教会を立て、25以上の宣教活動を行っている。教会理念である4つのLを確実に実行に移し、新しいことに挑戦しながらも、創立時の勇気ある若いドイツ人女性たちが持っていたスピリットも忘れない。今後も望む人がいれば、国内外を問わずに教会設立のサポートをしていくという。現地時間の2月25日(日本時間26日)には、ブラウン主任牧師の就任18周年を記念する礼拝が行われる。2016年には博士号も取得するなど、常に向上心を持ち続けるリーダーの目は、すでに次の100年に向けられている。

■ ベテル・ゴスペル・アッセンブリー(Bethel Gospel Assembly)教会
公式サイト:https://www.bethelga.org
住所:2-26 East 120th Street, New York, NY 10035

打木希瑶子

打木希瑶子(うちき・きょうこ)

米ニューヨーク在住のゴスペル音楽プロデューサー。米国のスピリチャル音楽レーベル「Pure Soul Music」の代表も務め、アジア人として初めて全米最大級のゴスペルコンテストの審査員に選ばれる。日本の「オレンジゴスペル」の企画者でもあり、ゴスペル音楽を使って「子ども虐待防止 オレンジリボン運動」の啓発にも協力している。米ニューヨーク・ハーレムのベテル・ゴスペル・アセンブリー教会で、日本人訪問者のためのバイブルクラスを担当。毎年、100人近い日本人が教会を訪問している。2016年秋からは、毎週水曜日午後10時(日本時間)にオンラインでのバイブルクラス「国際人としての常識“聖書”を学ぼう」を開催している。詳細・問い合わせは「Gospel Now」まで。

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