信仰がつなぐコミュニティーの暮らしとは? 国分寺で「アーミッシュの暮らし展」

2018年1月19日08時00分 記者 : 守田早生里 印刷
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+信仰がつなぐコミュニティーの暮らしとは? 国分寺で「アーミッシュの暮らし展」
「アーミッシュの暮らし展」を主催した「Down to Earth」の山中麻葉(まは)さん=17日、カフェスロー(東京都国分寺市)で
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米東部や中西部の農村部などで、数百年前の生活様式を守って生活を続けるキリスト教の一派、アーミッシュの暮らしを紹介する展示会が、12日から17日まで、東京都国分寺市のカフェスローで開催された。主催したのは、アーミッシュ風ワンピースの制作・販売を行う「Down to Earth」の山中麻葉(まは)さん。山中さんは、十数年前からアーミッシュの生活に興味を持ち、2006年と15年に現地滞在を経験した後、今もなお彼らの暮らしを研究している。

アーミッシュの起源は16世紀の欧州。信仰告白をした成人の洗礼のみを認める「アナバプテスト(再洗礼派)」の指導者ヤコブ・アマン(1644~1712)に賛同した人々が、「アマン派」として独立したのが始まり。彼らは16世紀後期には、欧州から米国に移住を始めた。

欧州にいたアーミッシュたちは、当時のカトリック教会から異端視され、拷問や弾圧、迫害の歴史をたどった。そのため、礼拝はひそかに洞窟や信徒宅で持たれた。その名残から、現在も建物としての教会は持たず、礼拝は持ち回りで信徒宅などを使い、行われるという。

山中さんが2度訪れた米中西部オハイオ州に住むアーミッシュたちは100人から200人くらいの教区に分かれ、個人宅の納屋などで礼拝を持っていたという。

彼らは通常、独自の言語である「ペンシルベニア・ダッチ」(ドイツ語系の言語)を話す。「ダッチ」とあるが、昔はドイツ語やドイツ人を意味する言葉で、オランダ語とは直接の関係はない。彼らは今も、この言語を自分たちのアイデンティティーとして維持している。しかし、コミュニティーの外の人と話す時には、普通の米国人と同じく英語を使うという。

米国では、ペンシルベニア、オハイオ、インディアナの3州を中心に約30万人のアーミッシュが住んでいるといわれている。基本的には、親から子への信仰継承のみで、外への積極的な伝道は行っていない。アーミッシュの家庭に生まれた子どもたちは、コミュニティー内の学校で8年間、基本的な教育を受けるのみで、大学などの高等教育を受けることはない。

アナバプテストとして、幼児洗礼は認めておらず、決心した者が自ら洗礼を志願し受ける。一方、アーミッシュとは本来、洗礼を受けた人たちのことであり、受洗前の若者は厳密にはアーミッシュではない。彼らは、スマホやパソコンはもちろん、洗濯機やクーラー、車に至るまでテクノロジーに頼らない生活をしているが、受洗前であれば、これらの電子機器を持ったり、車を運転したりすることが許されている。

山中さんも滞在中、日本のゲーム機で遊ぶ子どもたちや、スマホをいじったり、コミュニティー外の友人と車で出掛けたりする若者たちを見掛けたという。

基本的にはテレビやパソコンなどの娯楽がないため、子どもたちはきょうだい同士で遊んだり、飼牛や犬、猫などと戯れたりして遊ぶ。また、大人の仕事や家事を間近で見ながら、やるべきことを学んでいく。大人たちも「邪魔だから」と追い払うことはせず、できる仕事は子どもたちに手伝わせる。5歳を過ぎると、毎日のルーティンの中から各自の仕事が与えられる。

アーミッシュというと、パイやクッキーなどに代表されるスイーツを想像する人も多いだろう。すべての食事を自給自足しているように思われているが、山中さんによると、彼らもスーパーに出向き、普通の米国人が食べるような食事や、いわゆるジャンクフードのようなものも食べるという。

食事の前には祈りをささげるが、家族全員が手を組み、目を閉じ、声を出して祈ることはしない。それぞれが静かに祈り、一家の主が鼻をすする音を出すと、祈りが終了する。食事を開始しても良いという合図なのだという。

彼らは、米国の一般社会を知らないわけではない。受洗前には、電化製品や文明の利器がいかに便利で快適であるかを十分経験する。しかし、およそ85パーセントの子どもたちが洗礼を受け、アーミッシュとしての人生を選ぶという。

信仰がつなぐコミュニティーの暮らしとは? 国分寺で「アーミッシュの暮らし展」
連日、多くの人が詰め掛けた。

2006年には、アーミッシュの学校で残忍な事件が起きた。コミュニティーの近くに住む男が学校に押し入り、女子生徒だけを教室に残し、銃を発砲したのだ。ある少女が年下の生徒をかばおうと「私を撃って!」と犯人の前に進み出ると、銃口は彼女に向けられた。さらに、その少女の妹が「次は私を!」と続き、2人は銃弾に倒れた。犯人もその場で自害した。

事件後、アーミッシュたちは犯人の自宅を訪問すると、犯人の家族に対して「赦(ゆる)し」を表明。犯人の葬儀にも参列した。

山中さんは、「シンプルな生活を送る彼らが、その信仰によって、本来憎いはずの犯人を即座に赦したということを聞いて、とても驚きました。アーミッシュの信仰は、体に染み付いているのだと思いました」と言う。

スマホ中毒やゲーム中毒などに陥り、コミュニケーションの問題に苦しむ人が後を絶たない日本。人口は減少し、キリスト教界では信仰継承や、信徒の高齢化が問題となっている。しかし、何もないはずのアーミッシュの暮らしには、これらがすべて逆の状態で存在する。

電化製品がない代わりに、地域や家族の結束は強い。一家庭平均7人の子どもが生まれるため、人口は増加の一途をたどっている。どんなに便利で一見魅力的に見える世界を経験しても、多くの子どもたちが信仰と共に生きることを選ぶ。洗濯に2時間かけ、自分たちで作った野菜や果物は余すことなく保存食にする。移動は、エコカーでも電気自動車でもなく、馬車(バギー)。協力し合いながらコミュニティーを形成し、信仰を親から子へとつないでいく。

便利で文化的には豊かなはずの日本の生活、不便と思われるがゆっくりと時間の流れるアーミッシュの生活。対照的な2つの文化の中で「信仰」を見るとき、学ぶことはあまりにも多いのではないだろうか。

展示はすでに終了したが、山中さんが撮りためた写真や、現地の学びや気付きを中心にまとめた写真集は、オンラインショップで販売する。詳しくはホームページを。

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