神さまが共におられる神秘(43)赦せない人のために祈るクリスマス 稲川圭三

2017年12月25日06時58分 コラムニスト : 稲川圭三 印刷
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2014年12月24日 主の降誕
(典礼歴B年に合わせ3年前の説教の再録)
今日あなたがたのために、救い主がお生まれになった
ルカ2章1~14節

説 教

イエス・キリストの誕生は、飼い葉桶の中に寝かされた赤ん坊という誕生でした。その姿からは、誰もそこに「救い主」が生まれたという真実を見いだせないでしょう。しかし、目に見える出来事の奥にある目に見えない意味に私たちを出会わせてくれるのが神の言葉です。

「わたしは、民全体に与えられる大きな喜びを告げる。今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである。あなたがたは、布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子を見つけるであろう。これがあなたがたへのしるしである」(ルカ2:10~12)

メシアとは「救い主」という意味のヘブライ語です。では、「救い」とは何でしょうか。「すべての人と神が共にいてくださる」という真実に出会わせていただくことだと私は思います。神さまは私たちを愛し、ご自分の子としていのちをお与えになりました。人間一人一人の中には、神さまが注がれた「永遠」といういのちがあります。死によっても決して奪われることのない、いのちの真実があります。その目に見えない真実に出会わせていただくことが「救い」です。

イエス・キリストは、「神が共におられる」というその真実を真に生きてくださいました。そして、出会う人一人一人にその真実を告げて、一人でも多くの人がその真実に出会うよう働きかけたお方でした。だから、「救い主」です。

今日、クリスマスは、救い主であるキリストの誕生のお祝いです。キリストは私たち一人一人と一緒にいてくださり、自分の目の前にいる人の中に「神さまが共にいてくださる」ことを受け取らせてくださるお方です。

先日、電話がかかってきました。信者ではない大学2年生の男性です。「神父さんとお話しできますか」と言われたので、お会いすることにしました。

その方はしばらく黙ってからぽつりと、「人との関係をどういうふうにしていいのか、もう分からなくなりました」と言って、次第に厳しい顔になりました。「私は今まで人を傷付けることによってしか、自分を守る方法を知りませんでした。高校には行かず、検定で大学に合格しました。バイト先の人とはある程度距離があるからいいけれども、学校の人とはいつかぶつかって傷付けてしまうのが恐ろしい」

私は一通りお話を伺った後、その方に「赦(ゆる)すことができない方がおられますか」とお聞きしました。そうしたら「はい」とおっしゃいました。「何人くらい」とお聞きすると、「30人」と言われました。「もし差し支えなかったら、どういうことか、お話しいただけますか」と言ったら、「小学校の時にクラスのみんなにいじめられた。学校の先生もそれに一緒になった。自分の両親もそれを助けてくれなかった。クラス中の悪いことを全部、まるではけ口であるかのように、自分のせいにされた」というふうに言っていました。

そして、お聞きすると、ご自分の中で一番赦しがたいのは学校の先生のようでした。「その先生に『神さまが共におられます』と心の中で言うことはできますか」とお聞きすると、「それは無理です」とおっしゃいました。「私はその先生のことを存じあげないけども、私も一緒にその先生に向かってあなたと一緒に『神さまがあなたと共におられます』と申し上げるので、一緒に言っていただけませんか」とお願いしたら、その方は「分かりました」とおっしゃいました。「お名前を教えていただけますか」と聞いたら、「名前を覚えていません。忘れました」とおっしゃるのです。「では、その先生に『神さまがあなたと共におられます』と申し上げるので、ご一緒に言っていただけますか」と言うと、「はい」と言われました。その方は目をつぶって、非常に苦しい顔をさせながら、眉間のあたりを震わせるような感じで、「神さまがあなたと共におられます」とおっしゃいました。

赦せない方が30人と数が多かったので、私は指折り数えながらお聞きしました。「次の方が思い浮かびますか」。「はい」。「その方のお名前は」と聞くと、クラスの生徒さんについても「名前は分かりません。忘れました」とおっしゃいました。「私が名前を覚えているのは、自分をいじめなかった5~6人で、それ以外の人は全部、名前は分かりません」とおっしゃるのです。「分かりました。では、ご一緒にお願いします」。「神さまがあなたと共におられます」。「はい、ありがとうございました。次の方が思い浮かびますか」。「はい」。「では、ご一緒に」。「神さまがあなたと共におられます」。そのようにお祈りをしていきました。

ご両親のお名前はさすがに覚えておられたので、お父さんとお母さんのためにもお祈りし、「次の方が思い浮かびますか」と聞くと、即座に「はい」と答えられました。おそらく頭の中に映像としてはっきり覚えておられるのでしょう。「次の方が思い浮かびますか」と言うと、「はい」とすぐに言われて、「神さまがあなたと共におられます」というお祈りを続けました。その都度、本当に苦しい顔をされていましたけれども、ご一緒に「神さまがあなたと共におられます」というお祈りを続けました。私は指を折って数えながら、「次の方が思い浮かびますか」とお聞きすると、「ええと、ああ、だいたいそれだけです」とおっしゃいました。最初は30人と言われたけれど、指折り数えてみると13人でした。

そしてその後、申し上げました。「あなたは『今まで人を傷付ける以外に自分を守る方法を知らなかった』とおっしゃいました。しかし、たとえ自分を傷付けたり、非難したり、馬鹿にしたり、無視したりする人に対して、あなたが『神さまがあなたと共におられます』と祈る時、相手の人はあなたの体ぐらいは傷付けることができるかもしれないけれど、あなたの魂を傷付けることは絶対にできないのですよ」と。なぜなら、「神さまがあなたと共におられます」と祈った時、実はその方の内で、その方と共に一緒に祈ってくださる方があったからです。それはキリスト、メシア、救い主です。

その方は13人の「決して赦せない人」に向かって、「神さまがあなたと共におられます」と祈りましたが、その方の中におられるキリストが一緒に祈ってくださったのです。キリストと一緒にその方は、決して赦す気持ちになれない人に「神さまがあなたと共におられます」と祈りました。そのとき、その方は、ご自分という「飼い葉桶」の中に、イエス・キリストという「メシア」を誕生させたのではないかと思います。

その大学生が訪ねてこられた理由は、本当にそのためだけでした。握手をして別れました。「ありがとうございました」と言って帰って行かれました。

今日、イエス・キリストの誕生のお祝いに、周りにいる人に「神さまがあなたと共におられます」と祈るとき、私たちの中に真に救い主キリストを誕生させることになります。そして、それこそが本当のクリスマスのお祝いです。そう祈るとき、相手の方のいのちの中に、今日のキャンドル・サービスのように神さまの光を灯す者になります。

稲川圭三

稲川圭三(いながわ・けいぞう)

1959年、東京都江東区生まれ。千葉県習志野市で9年間、公立小学校の教員を務める。97年、カトリック司祭に叙階。現在、カトリック麻布教会主任司祭。著書に『神父さま おしえて』『イエスさまといつもいっしょ』『365日全部が神さまの日』『神さまのみこころ』(いずれもサンパウロ)など。
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