チャペルで祈りながら弱さを支え合って 青学大ボランティアセンター開設1周年記念シンポジウム 阿部志郎氏が講演

2017年11月30日06時43分 記者 : 坂本直子 印刷
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基調講演を行う阿部志郎氏=18日、青山学院大学14号館総合研究所ビル大会議室(東京都渋谷区)で
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青山学院大学ボランティアセンター開設1周年記念シンポジウム「”経験”×”繋(つな)がり”で更(さら)なる『発展』を!」が18日、同大14号館総合研究所ビル大会議室(東京都渋谷区)で開催された。同大名誉博士の阿部志郎氏(91)が「主体性を持ったボランティア活動の意義とは」と題して基調講演をし、その後、学生の活動発表やパネルディスカッションも行われた。

阿部氏は日本の社会福祉事業における第一人者で、横須賀基督教社会館の館長を半世紀務め、現在は同館会長、神奈川県立保健福祉大学名誉学長でもある。

まず阿部氏は、欧米と日本における隣人愛の違いを、その家族関係と社会関係の違いから説明した。日本には昔から、子どもへの慈しみ深い母の愛がある一方、「敷居を跨(また)げば7人の敵」、「人を見たら泥棒と思え」といった戒めがあるように、内とよそ者を峻別(しゅんべつ)し、母の愛も家の中から出ることがなかったという。

「他人である夫婦関係を家族の基本とし、その延長線上に『隣人』がいる欧米人と違って、先祖から子孫、親から子、孫へと垂直につながる日本人にとって、『隣人』は遠い存在になってしまった。隣人に対して文化的・社会的な壁がある」

青学大ボランティアセンター開設1周年記念シンポジウム 阿部志郎氏が講演
シンポジウムには、ボランティア経験者や、他大学のボランティアセンターの職員など、学内外から約80人が参加し、質問・意見も活発に交わされた。

続いて、身体障がい者福祉の歴史にも触れた。障がい者が虐げられてきたことは欧米社会でも同様だが、第1次世界大戦を機に、日本とは違った方向に進んだという。米国では、負傷兵のためにリハビリテーションが発達し、自立して生産社会で働けるようにしたが、日本は、身体障がい者となった兵隊を「廃兵」と呼び、彼らは社会からも見捨てられたのだ。

英国では1942年に「ベヴァリッジ報告」が出され、第二次世界大戦後、それに基づく社会保障制度がアトリー内閣により実施された。そして、ベヴァリッジもアトリー首相もロンドンのスラム街でボランティアをしたという。

阿部氏は、欧州が作った社会保障の思想の根底には「連帯」の思想があると話す。

「聖書に『わたしたち強い者は、強くない者の弱さを担うべきであり、自分の満足を求めるべきではありません』(ローマ15:1)とあるように、人間の強さとは弱さを担えること。弱さを支えながら、一つ一つの機能が組み合わされて体を作るように、社会もそれぞれが役割を持ち、強い人は弱い人を支え、協力し合っていく。これが『連帯』だ」

日本でも戦後、ベヴァリッジ・プランに倣(なら)って世界に誇れる社会保障ができた。しかし、そこには「連帯」の思想はなく、国民のほとんどが「福祉とは、行政が全責任を持つもの」と誤解してきた。阿部氏は国民年金未納問題などを挙げ、「権利は主張するが、義務の負担はしない。日本はこういう土壌を培ってきた」と指摘する。

「経済が発展して生活は便利になったが、何か失われたのではないか。では、今それをどうやって乗り越えるか。法律は、できたそばから古くなり、新しいニーズに応えられずに欠陥が出てくるが、システムの中にいると居心地がよく、出たくなくなる。その仕組みを乗り越える、ほとばしるエネルギーからボランティアは生まれる」

アンケート調査によると、日本では現在、成人の60パーセントがボランティアに興味を持っているが、実践している人はわずかしかいない。阿部氏は、「こういう人を掘り起こして活動につなげていくことが今の課題。皆さんも自分で一歩を踏み出し、進み出てほしい」と呼び掛けた。

「ボランティアのメリットは、人と人が出会って互いの光を探りながら共に歩いていき、それによって自分自身が成長していくことにある。出会いとは、人種や民族を超えて互いの魂の目を開き合うこと。特に若い間に出会いを重ねてほしい」

最後に阿部氏は、「ボランティア活動を続けていくうえではビジョンが必要。そのビジョンはロマンによって生み出される」と強調した。そして、「その時に見るべきは、ロマンを映し出す『月』(神)であり、月を指す自分の指ではない。だからこそ祈りが大切」と訴えた。

「青山学院大学にチャペルがあり、そこで礼拝をささげられることは学生の特権。チャペルは、神の前で自分に向き合うところで、そこには祈りがある。東日本大震災ですべてを失い、絶望に陥った人々が最後になしえたことは祈りだった。『天気予報の父』と呼ばれた藤原咲平(さくへい)は、『分からなければ空を見ろ』と言った。これは、『行き詰まったら、自分に不安が出たら、空を見よ』という意味も込められていると思う。お互い、上なるお方を仰ぎ見ながら、一足一足ボランティア活動をしていくことができれば、これほど幸せなことはない」

青学大ボランティアセンター開設1周年記念シンポジウム 阿部志郎氏が講演
「ボランティア・プロジェクト・サポート制度」(ボラサポ)に採択された学生団体による活動報告

そう語って基調講演を締めくくった阿部氏に続き、学生4団体が活動報告をした。ボランティアセンター学生スタッフRooteと「ボランティア・プロジェクト・サポート制度」(ボラサポ)第1期募集に採択された「三陸港まつり開催支援プロジェクト」と「体育会レスリング部 大島クリーンプロジェクト」、「Samaritans Place 支援プログラム」だ。

ボラサポとは、学生や教職員が行うボランティア活動を支援する制度。青学生や教職員が3人以上集まれば誰でも応募でき、これまでやってきた活動でも、新しく始めたい活動でも、条件がかなえば審査対象になる。プロジェクトが採択されると、その実施経費の一部が補助されるとともに、学内外の組織・人材との連携や広報等について同センターがサポートを行う制度だ。

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