日本人に寄り添う福音宣教の扉(32)私を遣わしてください 広田信也

2017年11月2日06時18分 コラムニスト : 広田信也 印刷
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「私は、『だれを遣わそう。だれが、われわれのために行くだろう』と言っておられる主の声を聞いたので、言った。『ここに、私がおります。私を遣わしてください』」(イザヤ6:8)

10月27日から10日間の予定で、東京ビッグサイトにて東京モーターショーが開催されている。入場者数は80万人程度で、大きなイベントのようだが、20年前には、今の2倍近くの入場者数があり、自動車への関心ははるかに高いものだった。

当時の私は、ディーゼルエンジンの開発に従事していたが、ちょうど20年ほど前、主にヨーロッパにおいて、ディーゼル車の増加により都心部の大気汚染が深刻化し、新技術の開発に期待が集まっていた。

各社がそれぞれの技術開発をしてはいたが、どこも指針を示せない中、2001年の東京モーターショーの展示の中心に、私たちの担当している技術展示が選ばれることになった。

モーターショーの展示といえば、着飾ったコンパニオンとコンセプトカーのイメージが強いのだが、その時は、開発途上であったエンジンの技術展示がトヨタブースの中心に据えられる異例の扱いになった。

開発途上といえども、モーターショーとなると社内の広報・宣伝関係者を中心にさまざまなイベント関係者が集められ、立派な展示ブースが作られていった。

大小さまざまなビデオモニターが配置され、その傍らで来場者からの質問に答えるのが私の役割だったが、ほとんどの人は、定期的にモニター前で語られるイベント担当者のアナウンスを聞いて満足しているようだった。

もちろん展示内容のすべては、私たち自身が企画し、最後まで監修したものである。しかし、完成されたものは関係者の努力によって、私自身が語るよりはるかに力強く将来を指し示しているように感じられた。

世界中で求められつつも、多くの課題を抱え、技術者たちが手をこまぬいている難題に対し、未完成の技術でありながら「私たちがやらせていただきます!」と宣言してしまったのである。

スタートラインでウォーミングアップをしているヨーロッパの実力者ぞろいのランナーたちの前で、スタートの号砲を鳴らしてしまったような出来事だった。

当然のことだが、それから数年間、私は社内外から押し寄せる荒波の中で、実に慌ただしい日々を過ごすことになった。多くの人と出会い、議論し、中には苦い思い出も数多く体験した。

さまざまな評価がされるだろうが、私自身に関しては、自ら宣言した技術開発の課題をまっとうできなかった責任を取らされたようにも思う。発表した技術は過去の歴史にしまわれ、私は役職を解任された。

しかし、存続の危機にあったディーゼルエンジンは、さまざまな新技術によって今も存続している。私の関わった多くの技術も関係者の手によって磨き直され、多くの車で採用されているのは実にうれしいことである。

誰かがスタートの号砲を鳴らす必要があったのだろう。図らずも私たちがその役を担ったが、結果的には、多くの技術がせきを切ったように生み出され、ディーゼルエンジンの存続に貢献していった。

私は2011年に退職した後、神学校に入り、14年から「国内宣教師」として日本宣教に関わるようになった。いまだ3年しかたっていないため、経験不足は否めないが、この分野でも宣教スタートの号砲を鳴らし続けたいと願っている。

地域教会に集うことを中心に描いていた宣教活動から、日本の家族に、職場に、あらゆる共同体に寄り添う宣教が必要になっている。

「私を遣わしてください」と願う者自身が、あらゆる手段を駆使し、地域教会の枠だけでなく、他の教会や未信者の協力も得ながら、目標となる共同体の中に福音を届ける仕組みを構築する働きが求められている。

聖書に記されるイザヤの献身は決してたやすい道のりではなかった。しかし、彼の働きは、イスラエルの民にはっきりと進むべき道筋を示し続け、やがてキリストによって全世界に祝福をもたらすことになっていった。

そのような献身をぜひともさせていただきたいものである。

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広田信也

広田信也(ひろた・しんや)

1956年、兵庫県生まれ。1980年、名古屋大学工学部応用物理学科卒業、トヨタ自動車(株)入社。1981年、トヨタ自動車東富士研究所エンジン先行開発部署配属。2011年の定年退職まで、一貫してクリーンディーゼル新技術を先行開発。保有特許件数500件以上。恩賜発明賞、自動車技術会論文賞などを受賞。1985年、キリスト教信仰入信。2016年現在に至るまで教会学校教師。1988~98年、無認可保育所園長。2011年、関西聖書学院入学。2014年、同卒業。ブレス・ユア・ホーム(株)設立。2016年、国内宣教師として按手を受ける。

ブレス・ユア・ホーム

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