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刑務所伝道シリーズ(20)「いらない」と言われて育った暴力団員が「愛されている」と伝える者に

2017年7月31日09時27分 記者 : 守田早生里 印刷
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日本有数の暴力団組織のメンバーとなり、発砲事件を起こした後、10年間の服役。獄中に差し入れてもらった聖書とアーサー・ホーランド牧師の本に心を奪われ、獄中で回心した。出所後、神奈川県内の教会で洗礼を受け、今年4月、都内の神学校に入学したばかりのY(仮名)さんに話を聞いた。

Yさんは神奈川県で生まれ育った。3人きょうだいの末っ子で、兄とは7歳、姉とは5歳離れていた。幼い時から父親に「お前は生まれる必要のない子だった。お前が生まれたから生活が苦しくなった」と言われて育った。当然、父親に遊んでもらった記憶もない。夜遅く帰ってくる父親は、いつもYさんを踏んづけて自分の寝床に入ったという。

「なぜかよく分からないけど、これは鮮明に覚えています。いつも、おやじが帰ってきたなと思うと、俺の布団の上を歩いて、足を踏むんですよね。大きな意味はないかもしれませんが、幼心に『やっぱり俺はいらない子なのかな』と思いましたよ」

唯一の救いだった母親に、自分が生まれたことをどう思っているか聞いてみると、「どうせ産むなら、女の子がよかった」と言われた。どこにも自分の存在を認めてくれるところはなかった。それが当たり前だと思って育ったという。

ギャンブルに熱中して借金を重ねる父親。共働きで常に不倫相手を見つけてくる母親。兄と姉が独立すると、まだ幼かったYさんは常に1人で留守番をしていた。

「やっぱり、俺はいらない子」

幼い日の記憶は、ずっとYさんを苦しめた。いつも脳裏をよぎるのは、「死にたい」という思いだった。

中学校に入学したが、勉強は大嫌い。部活も真面目にはやらなかった。しかし、姉と兄は高校に進学せず、暴走族などに入って好き勝手なことばかりしていたため、せめてYさんを高校に進学させるのが母親の願いだった。Yさんも、上の2人が母親に迷惑をかける姿をさんざん見てきたため、「高校ぐらいは」と思っていたが、高校に合格できる見込みはなかった。

そんなYさんを担任の教師が支えてくれた。自宅に泊まらせ、食事を共にし、もちろん勉強も教えてくれた。そして、なんとか書類選考で入学できる高校に入れたのだという。

「今でもこの先生には感謝していますね。子どもって結局、親はもちろんですが、苦しい時にどんな大人に出会うかではないでしょうか。俺はこの時の経験を今後生かしていけると思います」

高校卒業後は不動産屋や運送会社に就職したが、長続きせず、21歳の時に暴力団のメンバーになった。3年間、「部屋住み」と呼ばれる、24時間ほぼ親分と一緒にいる生活を送った。当時の親分はYさんの目にとてもかっこいい男性に見えたという。家族愛、特に父親の愛に飢えていたYさんが、親分に引かれ、親分のために命を懸ける覚悟ができるまでに長い時間はかからなかった。「行け」と言われれば行く。「やれ」と言われれば何でもやった。

25歳になる頃からは薬物の販売を始め、やがて自身も使用するように。自分では量をコントロールして意識もしっかりしているつもりだったが、徐々に中毒になっていった。

29歳の時に発砲事件を起こす。幸い、被害者は一命をとりとめた。現行犯として逮捕されなかったため、すぐに全国指名手配がかかり、追われる身に。親分に電話をすると、「出頭して刑務所に入るなら、組に残して迎えも出してやるが、このまま逃げ回るなら破門だ」と言われた。それから1カ月間、好き勝手なことをしながら考え、結局、出頭する道を選んだ。

強盗傷人および薬物使用の罪で懲役10年が確定。自由のない獄中生活が始まった。

当時、友人関係だった現在の妻が聖書を3回、差し入れてくれた。1回目の時は、ろくに読まないまま受刑者仲間に渡してしまった。2回目の時も聖書に興味を示すことはなかったが、なぜか3回目の時は聖書の言葉に目が留まった。同時にアーサー・ホーランド牧師の著書を読み、「お前は愛されている。お前の罪は赦(ゆる)された」の言葉に心から感動したという。

イエス様を救い主として受け入れてから、Yさんの環境は一変した。それまで憎くてたまらなかった仲間や刑務官たちが、「この人たちも神様に愛されている」と思うと、今までイライラしていた心も自然と落ち着いてきた。受刑生活6年を迎える頃には、工場ではなく、冷暖房完備の部屋で私語もある程度許可されるパソコン作業をする仕事が与えられるようになった。

また、現在の妻との面会は許されていなかったが、妻やその教会の人々の祈りが聞かれ、それまで100年続いていた監獄法が改正されて、ずっと会いたいと思っていた妻との面会もできるようになった。

「自由のない場所で、神の救いによって自由を得た」とYさんは笑う。

出所間近になり、もう暴力団組織には何の未練もないはずだったYさんの脳裏に、「出頭したら迎えに行ってやる」という親分の言葉がよぎった。

「これが俺の弱さだと思います。出所する時に、『おつとめ、ご苦労さまでした』と迎えてもらいたくて、組織を離れることができませんでした。結局、それまで祈り続け、面会に訪れてくれた教会の方々、教誨(きょうかい)師の先生を裏切るような形になってしまいました。申し訳なく思っています」

しかし、出所後3カ月で組織から正式に離脱し、直後に洗礼を受けた。それからは真面目に働き、信仰を育んできた。

収入も安定し、神様と共に歩める喜びを味わいながら毎日を送っていたある日、献身の召しを受けた。それから1年悩んだが、その神様からの招きはますますはっきりと感じられるようになり、今年4月に神学校へ入って、最年長の1年生となった。

「一人一人に神様に愛されていることを伝えていきたい。そのためには路傍伝道がいいのではと考えています。また、自分と同じように、人生の道を逸(そ)れてしまった人にも語り掛けていきたいと思っています」と期待に胸をふくらます。

世の中に「いらない子」など1人もいない。そのことを自ら経験してきたYさんの言葉には力がある。

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