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ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―(34)アメリカ人もホームレス

2017年5月4日06時56分 執筆者 : 社会鍋100年調査隊 印刷
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アメリカ人もホームレス
救世軍少佐 B場さん

暮れも押し迫った12月29日の夜。B場さんは、横浜・伊勢佐木町の交番から電話を受けた。交番からの電話なんて、あまりいい気持ちはしないものだ。多少の不安を感じながら出てみると、「外国人のホームレスを、引き取ってもらえないか」ということだった。

アメリカ人のホームレス

「この近辺にはホームレスの人は無数にいるけれど、外国人のホームレスだって!?」。電話ではどうも要領を得ないと思ったB場さんは、早速交番に行ってみることにした。そして、深夜の空いている道を、車を走らせて交番に駆けつけた。

すると、2人の外国人が大きな旅行カバンを持って、しょんぼりとB場さんの到着するのを待っていた。アメリカ人だという彼らは、私の着ている救世軍の制服を見ると、ひと安心した様子で、にっこりと笑った。

お巡りさんは、すでに片言の英語で2人から事情を聞き出し、あちこちに連絡をしてみたとのこと。B場さんがあらためて事情を聞いてみると、見るからに大柄のアメリカ人男性はクリス、フィリピン系アメリカ人女性はアンナという名前だった。

彼らは友人を頼って来日をしたものの、持ち合わせのお金もすぐに底をつき、家賃が支払えなくなり、借りていた二俣川(神奈川県)のアパートを追い出されたというのだった。知り合いもいないという。(友人はどうなったのだろうか)

それで、横浜の街中を、何日か野宿しながら歩き回っていたのだ。以前福生に住んでいたというアンナは、幸いなことに、多少日本語が話せた。

ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―(34)アメリカ人もホームレス
(絵・太田多門)

「それなら救世軍を訪ねなさい」

交番に来る前に、最後の手段としてアメリカ大使館に連絡したが、年末の御用納めで閉まってしまい、1月4日にならなければ開かない。あげくの果てには「そのような個人への対応はできない」と、そっけなく断られてしまったという。ただ、幸いにも大使館では、「それなら救世軍を訪ねなさい」とアドバイスをしてくれた。

そこで、全財産を詰め込んだ大きな旅行カバンを持って寒風吹きすさぶ中を歩き回っているうちに、伊勢佐木町の交番までたどり着いたとのことだった。そのような経緯があって、お巡りさんも、「それでは、すべて救世軍に任せておくのがよいだろう」と判断し、すぐにB場さんの所に電話をしてきたのだった。

B場さんが、初めて外国人の、それも欧米人のホームレスと接したのは、イギリスの神学校で学んでいた頃だった。救世軍発祥の地であるロンドンで、実習として給食奉仕のためにテムズ川の畔に行ったときだった。「イギリスにも、段ボールの家に住んでいる人がたくさんいるのを見て驚いたものでした」とB場さん。日本では欧米人のホームレスはまず見かけないので、今回はその時以来の出会いだった。

ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―(34)アメリカ人もホームレス
(絵・太田多門)

教会の母子室が宿に

彼らは身元や経歴も分からず、さらに野宿を続けていたためにどんな病気や雑菌を持っているかもしれず、普通ならば、宿泊させるのに躊躇(ちゅうちょ)してしまう状況だ。しかし、大使館からの推薦と、さらに交番からの依頼となれば、見知らぬ外国人でも断ることもできない。しかも年末で、どこにも頼る所がないと言うのだ。

やむを得なく、一晩だけ小隊(教会)の母子室にお泊めすることにした。連れ帰って温かい食事を次々と出すと、2人はあれよあれよという間に全部たいらげてしまった。よほどお腹が空いていたのだろう。食事を終えると、「温かい食べ物や暖かい布団は久しぶりです」と言って、2階の母子室に上がって行った。

しかし、何日もそこに泊めるわけにもいかない。翌朝B場さんは、「東京の山谷へ行きなさい。そこで安いホテルに泊まり、年が明けたら大使館へ行きなさい」と言い、1万円を渡して2人を送り出した。

ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―(34)アメリカ人もホームレス
クリスとアンナを泊めた横浜小隊(教会)

ヨセフとマリア

B場さんは年の瀬が近づくと、時々ふと思い出すという。「クリスマスを迎えられるのはなんと幸福なことでしょう。暖かな休む場所があり、温かい食べ物を食べることができ、心配してくれる友人もいる。こんなに恵まれたクリスマスを迎えられることを感謝するたびに、私はクリスとアンナのことを思い出すのです」とB場さんは語る。

クリスとアンナには赤ん坊こそいなかったけれど、彼らはキリストの両親であるヨセフとマリアではなかったかと、B場さんは感じているという。不安がいっぱいで、頼るべき知人もなく、泊まる場所さえなかった・・・。そんな中で、妊娠中のマリアとヨセフは、ベツレヘムにたどり着いたのだ。

聖書に出てくるキリスト誕生前のヨセフとマリアの旅も、クリスとアンナのような、ホームレス同然の旅だったのではないだろうか。

(文・社会鍋100年調査隊)

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