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ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―(33)傷ついた子どもたちとともに

2017年4月18日07時33分 執筆者 : 社会鍋100年調査隊 印刷
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傷ついた子どもたちとともに
救世軍少佐 K藤さん

K藤さんは、少年院の先生になりたくて、社会福祉の道を選んだ。中学時代、友達が非行に走るのを止めることができなかったことが、深い心の痛みになっていたからだ。その頃から、いつかはこのような子どもたちのよき理解者としての教師になりたいと思い続けてきたという。

なぜ非行に走るのかを理解して

今も昔も、学校の先生は、なかなか子どもの話を聞かない。だから子どもたちは、暴れたり乱暴したり、先生が嫌がることをしたりして、危険信号を発するのだろう。

「それは、僕の方を見てください!という信号です。なのに、同じ悪いことをしても、先生は問題のある子どもたちだけを怒ってしまいます」とK藤さん。普通といわれる子どもたちは同じ悪いことをしても怒られないのに、問題のある子たちだけが、ものすごく怒られてしまうというのだ。

K藤さんは中学生の頃から、それは絶対におかしいと感じていた。思わず、学校の先生に向かって「怒るのなら、私たちも同じようにすべきじゃないですか。なぜ、あの子たちだけ目の敵みたいにするんですか。彼らこそ、もっと大事に関わってあげてほしいです!」と言ったことがあった。

するととてもかわいがってもらっていた先生から、「あんな子たちと関わっていたら、あなたがダメになるからやめなさい」と言われてしまった。「尊敬していた先生だっただけに、大変ショックを受けて、それ以上言うことができなくなりました」とK藤さんは語る。

そこでK藤さんは、非行に走りそうな友人たちにいつもついて回ることにした。何とか彼らを守りたいという思いから、日曜も、彼女たちがどこかに行くと言うたびについていったのだ。

「特に私に何かができるわけでもありませんが、どうしたら理解できるか、何とかしてあげられるかと、一生懸命だったんです」とK藤さん。彼女たちの親御さんからも「よろしく頼む」と言われたが、彼らを完全に守ることはできなかった。

彼女たちも、K藤さんを悪い仲間に引きずり込むことになるからと遠慮した。「気持ちは分かるけど、あんたにも迷惑かかるからもういいよ。十分気持ちは分かったから」と言ってくれたという。

それでもK藤さんの行動は、理解してくれる人がいるという安心感を生み、悪いことをしようとする気持ちを押しとどめるきっかけになったようだ。

「先生が変わらなければ、学校は変わらないと思います」とK藤さんは語る。悪い子を怒るのは簡単だが、なぜそうしてしまうのか、なぜそうなるのかを理解しなければ、良くはならない。悪いと分かっていて、そうせざるを得ない何かがあるのだ。

「覚えているよ」と伝えたい

K藤さんは25年間にわたって少年院を訪問している。キリスト教の教戒師としてではなくて、ボランティアとしてだ。その他に、講師として十何年か前から年に4、5回、授業を持ってもいる。そういう関わりの中で、「あなたたちのことはちゃんと覚えているよ」と伝え続けることを心掛けているという。

彼らは、もともとは本当にいい子たちだが、彼らの家庭が、彼らがそうなって当たり前のような状況だったのだ。親から虐待を受けたり、義父から性的な虐待を受けたりもしている。ひどい例では学校の先生、中には同性の先生から性的な虐待を受けるケースもある。「それでは人間不信になってしまいますよ」とK藤さん。

ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―(33)傷ついた子どもたちとともに
(絵・太田多門)

K藤さんも、初めて聞いたときは、とてもショックだったという。人との悪い出会いで悲惨な経験をしてしまったことにより、学校に行けなくなってしまうこともある。そういう不信感から、大人は皆そんな人間だと思うようになって、どんどん反抗的になってしまうのだ。

K藤さんは、そのような子どもたちに出会うと、「あなたは被害者なんだから、自暴自棄になったら、結局はあなたにそれが返ってくるのよ。あなたはこれ以上、自分をダメにする必要はないの。過去はともかく、今からはあなたを守ってくれる人もいるんだから。私だって心配しているし、祈っているから、新しい生き方をしていこうね」と言い、握手をして一緒にお祈りするという。

K藤さんが訪問しているK医療少年院では、そううつや、薬物で肝臓をやられた少年少女たちが、治療を受けながら過ごしている。「こんなに小さな子たちがそんなつらい経験をしていたなんてと、心が苦しくなります。また、よくここまで頑張ってこられたなと思います」(K藤さん)

諦めないで生きて

16歳くらいのある男の子は、小学校5年生の時に担任の先生からいたずらされたという体験を持つ。

そのことを、家族にも誰にも言えずにここまできたが、ある時、K藤さんに話し、「体がすごく楽になった」と言ってくれた。「ああ、よく我慢してきたね、もっと早く誰かに相談できればよかったねと言いましたが、本人はなかなか言えないものです」とK藤さん。

誰かに言ったとしても分かってもらえないし、「先生がそんなことするわけないよ」などと言われて、もっと傷ついたかもしれなかった。「彼はその時、苦しみを吐き出して楽になれたから、その後も元気でやってくれていると思います」(K藤さん)

他にも、義理の祖父から性的虐待を受けた女の子もいる。それは、新聞記事としては出ないし、祖父も認めない。とんでもないことに、祖母にいたっては、「孫が誘惑したんだ」などと言うのだ。

12~13歳の子が、そのようなことをするわけがない。明らかに祖父からのいたずらである。しかし、その子は被害者なのに、自分が悪いことをしてしまったという思いを抱え込んでしまっていたという。

彼らはとても傷ついていて、生きることに失望してしまい、その結果生きられなくなることもある。自殺未遂をしてしまうこともあるのだ。そのような話を聞くと、K藤さんは「そうだよね、お先真っ暗だよね。死んだ方が楽だと思うよね」とまず受け止めるようにしている。

そしてその後で、「今まで生きてきたのはきっと神様のご計画があるから。諦めないでね。私も諦めないで生きてきたおかげで、イエス様に会えたの」と話をする。

しかし、「神様がいるのに、なぜ私はこんな苦労をしなければいけないの。これって何なの。先生はそうやって神様に会えたけど、私はまだ受け入れられない」と、感想文を書いてくる子どももいるという。

このように、子どもたちからいろいろな話を聞くことで、心が重くなるとともに、厳しい現実があることを思い知らされるという。「先生を刺したとか、近所のおばさんやおじいちゃん、おばあちゃんを刺したという事件が起きるたびに、もしかしたら背後にそういう問題があったのではないかと、いつも考えます」と、K藤さんの共感する姿勢は徹底している。このように、どこまでも問題を起こす子どもたちの側の視点に立って共感できる大人の存在が、もっと必要なのではないだろうか。

(文・社会鍋100年調査隊)

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ボランティア100年やってます

【書籍紹介】
「社会鍋100年調査隊」編『ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―

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