ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―(30)退所後の人との関わり

2017年3月7日19時42分 執筆者 : 社会鍋100年調査隊 印刷
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退所後の人との関わり
救世軍チャプレン N宮さん

N宮さんが救世軍・婦人ホームの役職として働いている間にできた制度の1つに、退所した人のための「退所者自立援助事業」がある。これは以前、宮城県知事をしていたA野さんが厚生省の生活課長で婦人保護を担当していた時代に実現したもの。障がい者福祉に関心のあったA野さんが現場に度々足を運ぶ中で、改善できる点は改善していこうということになった。このA野さんが置き土産に置いていったのが、退所者自立援助事業だ。

10人以上の退所者を世話している施設を対象に、年間140~150万円くらい、退所後もアフターケアの必要な人のために資金を提供できる制度を作ったのだ。

アフターケアの必要性

退所後も、就職したけれど失業してしまったとか、病気になってしまったなど、いろいろな問題が出てくることがある。N宮さんたちの施設のある地域で生活している人の場合、アパートの隣の人とゴタゴタがあったり、さまざまな問題で相談に来る。電話で済む場合もあるが、多くは実際にこちらから出向いて行ったり、来てもらったりして直接助言指導をしている。

また、場合によっては入院させたり、生活保護が必要な場合は、福祉事務所と相談して生活保護を受けられるようにする。さらに、精神的な症状が悪化して入院が必要になった場合は、予約を取って入院させるなど、さまざまな面で退所後の世話が必要なことがある。そのためには誰かが動かなければならない。パートで専門家を雇っている施設もあるが、利用者としては面識のない人と関わりにくい面もあるので、元いた施設の者が退所者の所に出向いて行って、アフターケアをすることになる。

きりがない働き

例えば、かつての入寮者の息子さんで、事件を起こして北海道の刑務所に服役していた人がいる。「母親があまり力になれないということで、私の家内にしょっちゅう相談の手紙や連絡が来ていたのです」とN宮さん。ある時、今度出所するに当たり、東京の方で働きたい、そのために必要な旅費やその他の経費に困っているので、必ず返すから3万円ほど貸してくれないかと手紙が来た。

N宮さんの妻が刑務所に問い合わせたところ、東京までの切符は買って手渡したが、当面の生活費までは出せないと言われた。そこで、生活するためのお金が1円もなければどうしようもないからと、N宮さんの妻は、現金書留で3万円を送った。

当然、個人的なお金であり、返してもらえるあてもないが送ったのだ。このように、ある意味きりがないと言えばきりがない働きである。

さまざまな人間のありさま

また、退所者の中には、救世軍のお墓に遺骨を納められた人も何人かいる。東京の多摩墓地にある救世軍の墓所には、救世軍の各施設で亡くなられて、埋葬場所のない方の遺骨を納める納骨堂がある。そこで年に1回、毎年10月の第2土曜日に合同記念会が行われる。

退所した後で埋葬されたご遺族の中には、立派なお子さんもいる。「ある方は、郵便局の職員になり、結婚して子どもも生まれました。その方が毎年、奥さんやお子さんたちを連れて合同記念会に出て来るのですが、そういう姿を見ると、お世話のしがいがあったなと思います」とN宮さん。

婦人保護施設にいた人々には、本当に考えもつかないようなさまざまなケースがあるという。婦人保護施設の利用者には、生まれたときから恵まれない不遇な環境で、親族からも手厚いお世話をしてもらえない人が多い。中には、親の顔を知らない人もいる。「長い間この働きをしてきて、さまざまな人間のありさまを見させていただきました」。N宮さんは、しみじみとそう語った。

ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―(30)退所後の人との関わり
1988(昭和63)年12月、作業所で働く寮生

(文・社会鍋100年調査隊)

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ボランティア100年やってます

【書籍紹介】
「社会鍋100年調査隊」編『ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―

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