ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―(24)戦後の女性保護

2016年12月14日03時18分 執筆者 : 社会鍋100年調査隊 印刷
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戦後の女性保護
救世軍資料館館長 A野さん

第2次世界大戦が終わって米軍のマッカーサーが日本を管理し始め、総司令部の命令によって公娼制度が廃止になった。そして、農地改革により貧しい農家の生活がガラッと変わったのを契機に、身売りはなくなってきた。当時の女性保護について、救世軍資料館館長のA野さんに話を聞いた。

婦人寮が子どもの施設に

公娼廃止(1947年、廃娼令実施)の頃から1961年まで、A野さんは浅草にいた。その頃に廃業した女性たちの保護施設としては、救世軍婦人寮がすでに市ヶ谷にあった。

ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―(24)戦後の女性保護
(絵・太田多門)

戦後、東京の立川市と広島県呉市で、救世軍による婦人への働きが始まった。呉は評判が悪い連合軍の海軍の連中が占領し、当時は町中が堕落していく感じだった。呉の婦人寮を始めたのは、満州から帰ってきた救世軍士官夫妻だった。呉を占領した連合軍にはチャプレン部があった。

「自分たち牧師はチャプレンとして呉に来たけれども、ここに来ている海軍のありさまは何だ! 昼日中から町のど真ん中でいかがわしいことをしている! これでは呉の市民に対して恥ずかしい」ということになり、連合軍の土地(今の愛光園、呉小隊、呉保育園)を日本の政府と交渉して使えるようにし、救世軍に貸してもらうことから働きが始まった。

愛光園は、講和条約を結んだ1952年に、呉婦人寮の使命が終わってから、子どもの施設としたもの。当時は、子どもが捨てられたり、離婚がたくさん起きている。外国人と結婚しても、相手が帰国してしまうと、女性は捨てられてしまう。お腹は大きいし実家にも帰れない。本当なら病院が必要だった。

中には、混血の子もいた。黒人との間に生まれた子もおり、A野さんたちは「幼児さん」と言っていた。今は愛光園という施設になっているが、長い年月ずっと子どもを受け入れてきた。向かい側には保育所もでき、その敷地の中に救世軍の小隊もある。

「それでは、私がやろう」

東京では立川市に婦人保護施設ができた。立川には米軍基地があった。戦後、最初にここに婦人ホームができたのだ。それが、今の新生寮である。救世軍が根っことなっており、お金よりもスピリットを大事にしていた。というのも、今の婦人寮は救世軍の土地だが、その土地は東京都の土地だった。立川の町中に買春があふれ、東京都もほとほと困っていた。

兵隊は悪いが、兵隊を取り締まる権限は日本の警察にはない。アメリカの部隊にしてみれば、朝鮮半島で戦争が起きているのに、モラルなどややこしいことを言っていられるかという時代だったのだろう。それで、東京都が救世軍に広い土地を提供した。最初に掘っ立て小屋ほどではないが、粗末な家を造って女性たちを入れたのだ。戦争が終わって満州から帰って来た救世軍の人が、本土が焼け野原で難渋しているのを見て、「それでは、私がやろう」と始めたのが、立川の婦人寮、つまり新生寮だ。

戦後の婦人寮

ところが、入って来る女性は戦前の女性と戦後の女性ではまるっきり変わってしまった。戦後は、横柄で自由を謳歌するすれっからしばかりが来るようになり、夜は施設の中で女同士の喧嘩(けんか)が絶えなかった。盛んな喧嘩は昼間やり、夜は静かにし、首を締めたり、ひねったり、ぶったたいたりしている。そんなところから、救世軍の士官たちが婦人寮を始め、今の品のある新生寮になった。

東京都も比較的同情を示し、今から十何年か前に、新しい建物を造った。同時に東京都の婦人相談所の事務所も敷地内に設けた。そして、こちら側にも救世軍委託の婦人寮の建物を新しく造った。救世軍の女性保護施設の中でも、立川市だけは東京都新生寮と言う。杉並区の施設は救世軍の婦人寮である。

救世軍は山室軍平の時代から、女性の救済に力を尽くしてきた。その頃は、政府ができないため、国や周囲も救世軍にまかせていたのだ。昔は、女性が海外に売られていくということがあり、南方や大連に売られていく女性もいた。船が着いた所で救い上げるために、救世軍では大連に婦人ホームを造ったりもした。

ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―(24)戦後の女性保護
救世軍芝離宮保育所:関東大震災の被災者のため、設置されたバラックの建物で保育を行った。

現在の婦人ホーム

今でも、救世軍はDV(ドメスティックバイオレンス)の人のために婦人ホームを運営しているが、今は婦人相談所との関係があるため、勝手に運営できない。婦人相談所が背後にあり、そこである程度の審査が行われてから、救世軍に送られてくるのだ。生活に困っているとか、今は逃げ場がないなど、DVの女性が逃げ込んで来ることは、かなり前からあり、いつも満杯である。

昔や戦後間もない頃は、入っていた女性たちの大半は買春経歴があったが、今はそうではない。精神的な問題を持つ人も多い。戦前と今では世の中も変わったのだ。しかし、救世軍のスピリットである「心は神に、手は人に」の精神は、今も確かに受け継がれている。

ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―(24)戦後の女性保護
1994(平成6)年に改築された「新生寮」

(文・社会鍋100年調査隊)

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ボランティア100年やってます

【書籍紹介】
「社会鍋100年調査隊」編『ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―

救世軍ってどんな組織? なぜそこまでやるの? 社会鍋―救世軍は米国慈善組織の中で最も効率の良い・・・!? 廃娼運動―暴力団に襲われて死者まで・・・!? そのパワーは、どこから? 社会鍋100年調査隊が、その謎に迫ります。

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