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ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―(23)救世軍と女性廃娼運動

2016年11月29日18時17分 執筆者 : 社会鍋100年調査隊 印刷
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救世軍と女性廃娼運動
救世軍資料館館長 A野さん

A野さんが子どもの頃、A野さんの祖母は婦人矯風会(1886年「東京婦人矯風会」として発会、現・日本キリスト教婦人矯風会)の役員だった。まだ、昭和の初め頃の話である。

A野さんの祖母は大阪駅で「旅客の友」という活動をしていた。考案したのは、社会事業家の林歌子(1864~1946)。文字通り、旅をする客の友という意味だった。「それは矯風会の『駅の出店』でしてね。東京の方では上野駅でやっていました」とA野さん。

矯風会は矢嶋楫子(かじこ、1833~1925)によって始められた。「先生は廃娼運動に命を賭けた人。それが受け継がれていて、救世軍でも1900(明治33)年に実力行使をして、以来ずいぶんと運動を続けてきたわけです。うちのばあさんは、元は救世軍の士官として働き、後に矯風会の役員になった人」とA野さんは語る。

旅客の友

A野さんの祖母は、大阪駅で見張り、田舎から出てきてそのような商売に入っていく女の子を未然に防ごうとしていたのである。「売春防止」などと書いては大変なので、「旅客の友」という名前にして活動したのだ。

当時、急行が午後3時に大阪駅に着くと、A野さんの祖母が駅中を巡回し始める。矯風会のバッジをつけていたため、改札口はフリーパスだった。事前に情報をキャッチしていたのかどうかは定かでないが、目の付け所が違っていて、荷物や大きな袋のようなものを持っている若い女性を見つけるのがうまかった。

「戦後は、農地改革があって農家の生活がガラッと変わりましたから、身売りのようなことは公にはなくなったが、小作農の生活はひどかった。自分が行きたくなくても、親が仕方なしに売る。本人としても、私が行かなければお父さんやお母さん、弟や妹たちがやっていけないから・・・と。『おしん』(NHKテレビ)みたいにね」とA野さん。

「このクソばばあ!」

A野さんが忘れもしないのは、祖母が、矯風会の事務所に娘を連れて来た時のことだった。なぜ覚えているかというと、その日、生まれて初めて親子丼というものを食べさせてもらったからだった。「あれは遊郭関係の人間でしょうな。娘を取り返そうと後からついてきた男と、ばあさんがやり合うわけですよ。うちのばあさんもすごかった。ばあさんがあんなにけんかが強いとは思わなかったですよ。とにかくすごい」。

A野さんは当時まだ幼稚園児だったが、当時はマッチ箱のような事務所があり、そこで祖母が、「このクソばばあ!」と男に大声でののしられていたのを覚えている。A野さんは、奥の詰め所に入ってその様子を聞いていたが、祖母は女の人を部屋に入れると、外から鍵を掛けてしまうのだった。そして、どこかに電話をかけに行ってしまう。それから、いろいろと解放のための交渉が始まる。そうやって体を張り、売られていく前の娘たちや、遊郭から逃げ出して来た女性たちを救出していたのだ。

ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―(23)救世軍と女性廃娼運動
(絵・太田多門)

うちのばあさんはすごいことをしている

助け出されて、大きな家のお手伝いさんになったり、どこかで働いたりするようになった女たちが、後にお礼に来ることもあった。「こんなに立派になりました」と言って、土産にきんつばを持ってきたりした。それを子どもに夜食べさせるからよくないと、A野さんの母親は祖母によくこぼしていたという。

「まあ・・・思い出は皆食べ物につながっているわけですが、子どもなりに、うちのばあさんはすごいことをしているんだなあと思っていましたね」とA野さんは語り、愉快そうに笑った。

(文・社会鍋100年調査隊)

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ボランティア100年やってます

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