ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―(22)山室軍平の時代から

2016年11月15日21時13分 執筆者 : 社会鍋100年調査隊 印刷
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山室軍平の時代から
救世軍資料館館長 A野さん

教会の在り方や社会の在り方も、山室軍平が命を賭けて社会のために働いていた時代とは違ってきている。山室軍平の生活信条は、「錆びるよりは、すり減るほうがいい」だった。山室の日記や記録を見ると、夜寝ている時間が少ない。例えば、「児童虐待問題はどうすべきか」と考えると、一晩でやるべきことの発想が浮かんでいたようだ。山室軍平が活躍していた時代の救世軍ついて、A野さんに話を伺った。

ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―(22)山室軍平の時代から
(絵・太田多門)

軍旗1本

山室軍平の頃は、救世軍の軍旗1本と2カ月分の生活費だけを与えて、「ハレルヤハレルヤ」と送り出していた。無茶な話だが、それでも皆に祈ってもらい、送り出されるのだ。「君たちのことを祈っているよ!」と言われたら、祈りを背中に背負って出掛けていった。

ただ、山室軍平があのような活動ができたのは、背後にあっていろいろと準備した人の協力があったからだ。その頃は電話がないため、走って伝えに行くこともあった。「彼があれやってくれと言ったら、あれをやるというふうに、山室軍平の活躍の影には、夜も寝ないで準備した人がいたのだなと、つくづく思う」とA野さん。

山室軍平の働きを見て

山室軍平はとにかく忙しい人で、全国を飛び回っていたという。山室軍平の働きに対して、日本中どこでも行ける2等のパスを、当時の鉄道省が与えていたくらいだ。山室軍平と寝食を一緒にする人は、一緒に隅田川の浮浪者を見て回らなければならない。当時は自転車もそんなに使っていなかったし、バイクはない。足で回っているのだ。

だから、命がけの献身的な働きが救世軍の中に満ちていた。山室も自ら無駄なく動く。例えば、駅の構内で汽車を待っている時間が30分でもあったとしたら、駅が用意してくれた人々を相手に講演をしているという感じだったという。

そんな山室軍平の働きを見て、献身する人々が出てきた。酔っぱらいや大酒飲みから、あるいは遊郭通いした連中から、人々が救われて救世軍の中に入ってきていた時代だ。

ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―(22)山室軍平の時代から
隅田川の千住大橋に浮かぶ「ノア丸」

心は神に、手は人に

山室のいた時代、救世軍は、東京の隅田川の千住大橋近くに、大きな達磨(だるま)船を6隻くらい止めて、ノア丸(1930年ごろ)と名付け、救済した人たちを寝泊まりさせていた。その辺りには土地がないが、その頃はまだ、河川法で禁じられていなかった。今、そんなことをしたら捕まってしまうだろう。

救世軍の機関紙『ときのこえ』を見ると、「ノア丸、陸に上がる」という記事がある。「今も船の上でやれればいいのでしょうが、今の人は自由を要求するから、あんな所に茣蓙(ござ)を敷いたりして生活するというのは嫌がるでしょうね」とA野さんは語る。「私らが子どもの頃は、街頭生活者でなく、ルンペンと言っていました。まあ、この頃のルンペン君というのは穏やかです。子どもの頃に記憶がありますが、大阪で救世軍の小隊にルンペンをたくさん招待していました。これが山室の救世軍ですね。他の教会では、厳かな礼拝堂にはあんなルンペンたちを入れませんよ。救世軍だからできたのです」

特に、便所が大変だったという。問題は、食べさせると、後で必ず便所が必要になるということだ。「普通は嫌がりますね。よほど、こういうことへの同情や憐れみ、奉仕に対する誇り、神への献身がなければできません。献身とまでは言わなくても、クリスチャンとして一人一人が恵みを持っていないとできないでしょう」とA野さん。

山室の時代と今では世の中が変わったし、救世軍も変わってきている。しかし、山室のスピリットである「心は神に、手は人に」の精神は、形や方法は変わっても、救世軍にずっと受け継がれている。

ボランティア100年やってます―救世軍もつらいよ―(22)山室軍平の時代から
1930(昭和5)年、隅田川の千住大橋のたもとに達磨船6隻を浮かべ「ノア丸」と名付けた。

(文・社会鍋100年調査隊)

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