「神のいつくしみの証し人」マザー・テレサ、聖人に バチカンで列聖式

2016年9月5日17時25分 記者 : 行本尚史 印刷
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マザー・テレサ(1985年にローマで撮影されたもの。写真:Manfredo Ferrari)
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最も貧しい人々に尽くした「いつくしみの人」、コルカタ(カルカッタ)のマザー・テレサの列聖式が4日、教皇フランシスコによって執り行われた。バチカン放送局日本語版が同日報じた。

この日、バチカンの聖ペトロ広場には、マザー・テレサが創立した神の愛の宣教者会の関係者をはじめ、世界各国からおよそ12万人の巡礼者が詰め掛け、いつくしみの聖年にふさわしい、マザーの列聖を共に喜び祝った。

ミサの前半に行われた列聖式では、教皇庁列聖省長官アンジェロ・アマート枢機卿が、ポストゥラトーレ(列聖審査の申請代理人)と共に前に進み出て、教皇にマザー・テレサの列聖を願い、その人となりを紹介した。

厳かな「諸聖人の連祷」に続き、教皇はコルカタの福者テレサを聖人として宣言する式文を読み上げた。本紙によるそのラテン語原文の英訳からの非公式訳は次の通り。

神聖にして不可分であるところの三位一体の光栄のために
カトリック信仰の高揚のために
そしてキリスト教徒の生活の増進のために、
私たちの主イエス・キリストの権威によって、
聖使徒ペトロおよびパウロ、そして私たち自身の、
成熟した熟考を経て
そして神の助けを求める頻繁な祈りの末に、
私たちの尊敬すべき信者仲間たちの助言をもって、
私たちは宣言し定めます
コルコタの福者テレサを聖人であるとして
そして私たちは彼女の名前を聖人録に載せ、
普遍的な教会において
彼女が諸聖人の間で敬虔な信心をもって崇敬されることを
父と子と聖霊の御名によって。アーメン。

カトリック中央協議会は公式サイトで、「聖人とは、生存中にキリストの模範に忠実に従い、その教えを完全に実行した人たちのことであり、神と人々のために、またその信仰を守るためにその命をささげるという殉教もその証明となります。福者の列に加えられた後(列福)、もう1つの奇跡が前提となり、福者と同様な調査と手続きを踏んで、教皇が公に聖人の列に加えると宣言し(列聖)、その式(列聖式)はローマの聖ペトロ大聖堂で盛大に執り行われます。教会が聖人として公に認めるということは、天国の栄光の中にいること、全世界の人々がその聖人に取り次ぎを願ってよいこと、崇敬するに値し、世界中の全教会で公にこの聖人の日を祝うことになることを意味します」などと説明している。

バチカン放送局日本語版によると、4日に行われたマザー・テレサ列聖式のミサの説教で教皇は、神の御旨、神の招きとは何かと問いながら、「わたしが喜ぶのは、愛であっていけにえではない」というホセア書の言葉を示した。

教皇は、神はあらゆるいつくしみの業を喜ばれると説き、私たちが兄弟たちを助けることは、キリストご自身に触れることと強調。また、神の私たちへの召命は、私たちが自分の人生をもって奉仕し、毎日愛のうちに成長するという「愛の召命」であると話した。

マザー・テレサの列聖に合わせ、バチカンでは「ボランティア、いつくしみの奉仕者の聖年」が記念され、貧しい人、病者、難民、被災者など、困難な立場に置かれた人々にさまざまな形で奉仕する多くの人々もこの日のミサに参加した。

教皇は、あらゆる人間の命を受け入れ、擁護することを通して、全ての人に神のいつくしみを示したマザー・テレサの生涯を振り返り、言語や、文化、民族、宗教の違いを超えた無償の愛と、その微笑に倣うよう、ボランティアの人々をはじめ、信者たちを励ました。

ミサの後半行われた正午のアンジェラスの祈り(お告げの祈り)では、教皇は参加者らに感謝を表し、皆をマザー・テレサの保護に委ねた。そして、助けを必要とする兄弟たちの中に十字架のイエスを認め、これらの人々に奉仕することによって、イエスを観想し、礼拝するすべを、マザー・テレサが毎日教えてくれるようにと祈った。

また、教皇はこの席で、危険で困難な状況にもかかわらず、世界の各地で苦しむ兄弟たちに奉仕する多くの人々に思いをはせた。

特に前々日ハイチで殺害されたスペイン人宣教女を追悼した教皇は、同国の人々が平和な生活を享受できるよう、また同様に他の国々で暴力の犠牲になっている多くの修道女たちのために、全ての聖人の母である聖母マリアに祈りをささげた。

マザー・テレザの列聖を祝ったこの日、バチカンのパウロ6世ホールで、貧しい人たちのための昼食会が催された。

この昼食会では、神の愛の宣教者会の会員や、食事を準備するボランティアの人々の奉仕によって、およそ1200人の招待者が食事を楽しんだ。

コルカタのマザー・テレサ列聖式:教皇「最も貧しい人々に神を認め、奉仕する生き方を」

バチカンで4日、コルカタのマザー・テレサの列聖式が執り行われ、教皇フランシスコは、聖ペトロ広場でミサを執り行い、その中でマザー・テレサを聖人として宣言した。教皇はこの列聖ミサの説教で次のように話したと、バチカン放送局日本語版が同日報じた。

「『神の計画を知りうる者がいるでしょうか』(知恵の書9:13)。先ほど第一朗読で耳を傾けた、この『知恵の書』の問いは、私たちの人生を1つの神秘として示しています。この神秘を解く鍵は、私たちの所有ではありません。歴史の主役は常に2者です。それは神と、人間です。私たちの課題は、神の招きを知ること、そしてその御旨を受け入れることです。しかし、それを迷いなく受け入れるためには、何が神の御旨なのだろうかと、私たちは問うのです」

「『知恵の書』の同じ章にその答えは見いだされます。『人はあなたの望まれることを学ぶようになり』(知恵の書9:18)と。神の招きを知るためには、神が好まれることは何なのかを問い、それを理解しなくてはなりません。預言者たちは何度も、神の喜ばれることは何であるのかを告げています。預言者たちのメッセージは驚くほど簡潔です。『わたしが喜ぶのは、愛であっていけにえではない』(ホセア6:6、マタイ9:13)。神はあらゆるいつくしみの業を喜ばれます。なぜなら私たちが助ける兄弟の中に、誰も見ることのできない神の御顔を認めることができるからです。私たちが兄弟たちの必要のために身をかがめるたびに、私たちはイエスに食べさせ、飲ませ、神の御子に服を着せ、支え、そのもとを訪問したことになるからです(参考:マタイ25:40)。すなわち、私たちはキリストそのものに触れるのです」

「つまり、私たちは祈りの中で願い、信仰において宣言することを具体的な形にするようにと招かれているのです。愛において他の方法はあり得ません。兄弟たちに奉仕する者は、神を愛する者です(参考:Ⅰヨハネ3:16~18)。しかしながら、キリスト教的な生き方とは、必要な時に与えられる単純な助けとは違うのです。もしそうならば、すぐに与えることが可能な助けによって人道的連帯を感じることもできるでしょう。しかし、それに根がない限り、不毛なものとなるのです。主が私たちに望まれる努力は、そういうものではなく、キリストの全ての弟子たちが自分の人生をもって奉仕し、毎日愛のうちに成長するという、愛の召命なのです」

「私たちは福音朗読で次のような言葉を聴きました。『大勢の群衆がイエスと一緒について来た』(ルカ14:25)。今日、この群衆は、広いボランティアの世界に代表されます。ボランティアの皆さんはいつくしみの聖年のために今ここに来ています。皆さんは師イエスに従うあの群衆です。そしてイエスの一人一人に対する具体的な愛を目に見える形にする存在です。使徒聖パウロの言葉を皆さんに繰り返したいと思います。『わたしはあなたの愛から大きな喜びと慰めを得ました。聖なる者たちの心があなたのお陰で元気づけられたからです』(フィレモン7)。ボランティアの皆さんによってどれだけの心が慰められたでしょう。どれだけの手が人を支え、どれだけの涙が乾かされ、どれだけの愛が謙遜で私心のない隠れた奉仕に向けられたでしょう。この称賛すべき奉仕は、信仰を語るとともに、助けを必要とする者に寄り添う御父のいつくしみを表しています」

「イエスに従うこと、それは真剣であると同時に喜びに満ちた努力です。それは最も貧しい人々、見捨てられた人々の中に神なる師の姿を認め、これらの人々に奉仕するために、ラディカルな姿勢と勇気を必要とします。それ故、ボランティアの人々は、イエスの愛のために、貧しく助けを必要とする人たちに奉仕し、いかなる感謝も慰労も期待せず、むしろ、真の愛を見いだしたが故に、これら全てを捨て去るのです。私たちはこのように言うことができます。『主が私のところにやって来て、私を助けるために身をかがめてくださったように、私もまた主のもとへ行き、信仰を失った人、神は存在しないかのように生きる人、価値や理想を見いだせない若者、危機に面した家族、病者、受刑者、難民、移民、心身において弱り無防備な人々、自らを見捨てた未成年、孤立した高齢者たちの上に身をかがめよう。立ち直るための助けを求める手が伸ばされているところにはどこでも、私たちと教会がいて、彼らを支え、希望を与えなくてはならない』と。そして、私たちは自分が苦しんでいたときに差し出された主の御手を生き生きと思い出しながら、その奉仕をするのです」

「マザー・テレサは、その全生涯において、生まれてこなかった命、また見捨てられ、疎外された命、これら全ての人間の命を受け入れ、守ることを通して、全ての人に奉仕し、神のいつくしみを寛大に分け与える人となりました。『生まれてくる前の赤ちゃんは、最も弱く、小さく、あわれな存在です』と常に強調しつつ、命の擁護に力を尽くしました。衰弱した人、道端で死にかけている人の中に、神が彼らに授けられた尊厳を認め、これらの人を助けるために身をかがめました。マザー・テレサは地上の権力者たちに、貧困を生み出すという犯罪の罪は彼ら自身にあると、その意見を述べました。いつくしみはマザー・テレサにとって、彼女の全ての行いに味をつける『塩』であり、自分たちの貧しさと苦しみの故に、泣くための涙も枯れ果てた人たちの心の闇を照らす『光』でした」

「マザー・テレサの都市の辺境、そして人々の心の辺境におけるミッションは、最も貧しい人たちへの神の寄り添いを、今も雄弁に証ししています。今日、マザー・テレサの女性として、修道者としての象徴的な生き方を、ボランティアの世界全体に託します。マザー・テレサは皆さんにとって聖性のモデルです。おそらく、私たちはマザー・テレサを聖テレサと呼ぶことに少し慣れないかもしれません。親しみのある、優しい、豊かなその霊性故に、私たちは自然な形でマザー・テレサと呼び続けることでしょう。疲れを知らないいつくしみの奉仕者、マザー・テレサは、私たちの行いの唯一の規範が、あらゆるイデオロギーや制約から自由な、言語や、文化、民族、宗教の違いを超えた、無償の愛であることを教えてくれます。マザー・テレサはよくこのように言っていました。『私は彼らの言葉を話すことはできないかもしれませんが、微笑むことはできます』と。心の中にマザー・テレサの微笑を保ち、その微笑を私たちの人生の中で出会う人々、特に苦しむ人たちに贈りましょう。こうして、理解や優しさを求めている人々、落胆した人々に、喜びと希望の世界を開きましょう」

さらにバチカン放送局日本語版は3日、「コルカタの聖テレサ(1910~1997)略歴」という見出しの記事で、マザー・テレサについて次のように伝えた。

最も貧しい人々、疎外された人々への奉仕に生涯をささげたコルカタの聖テレサ(アグネス・ゴンジャ・ボヤジュ)は、1910年8月26日、旧ユーゴスラビア・スコピエのアルバニア系の家庭に、父ニコラ・ボアジュと母ドラナフィルの間に、5人兄弟の末っ子として生まれた。

誕生の翌日にカトリックの洗礼を受け、5歳半で初聖体を受けた。その時からゴンジャの心は人々の魂に対する愛で溢れた。

1928年、宣教女になる決意をし、アイルランドのロレート修道女会に入会した。1929年、インドに到着。1931年5月に初誓願を、1937年5月に終生誓願を立てた。

ロレート会の修道女としての20年間、テレサ修道女はコルカタの高等学校で地理の教師として教鞭を取り、校長を務めるなど、その慈愛、熱心さ、喜びに満ちた心で知られていた。

1946年9月10日、テレサ修道女はダージリン行きの汽車の中で、『全てを捨て、貧しい人々の間で、最も貧しい人のために尽くしなさい』というイエスの招きを聴く。

1948年、ロレート修道会を退会し、コルカタのスラムで使徒職を始める許可を得る。

1950年10月7日、「神の愛の宣教者会」を創立し、コルカタ大司教区の認可を受ける。1965年には、教皇庁の認可を得た。同会のカリスマは、最も貧しい人々の救いと聖化のために働きながら、愛と魂に対するイエスの無限の渇きを癒やすことにあった。その愛の宣教を広げるために、マザー・テレサは、神の愛の宣教者会の男子修道会である兄弟会(1963)、女子観想修道会(1976)、男子観想修道会(1979)、司祭会(1984)を創始したほか、協力者会、病者・苦しむ人々の協力者会、司祭のためのコルプス・クリスティ運動などを創立した。

1979年、ノーベル平和賞を受賞。

1997年9月5日、マザー・テレサは、コルカタで帰天。この時、神の愛の宣教者会の修道女は3842人、活動拠点は世界120カ国に594カ所までに広がっていた。マザー・テレサは、霊的な闇を体験しながらも、聖母マリアのエリザベト訪問のエピソードのように、どこにでも熱心に赴き、世界にイエスの愛を輝かせた。

こうして、マザー・テレサは、全ての人、特に愛を必要とする人、見捨てられた人、疎外された人に対する、神の優しく、いつくしみ深い愛の証し人となり、今も福音の光で世界の闇を照らしている。

また、マザー・テレサの出身地である旧ユーゴスラビアのスコピエがあるマケドニアの通信社「マケドニアン・インフォメーション・エージェンシー」や主要日刊紙「ノバ・マケドニア」、そしてマザーの家系であるアルバニアの主要英字紙「アルバ二アン・テレグラフィック・エージェンシー」(それぞれ電子版)なども4日、マザー・テレサの列聖を詳しく報じた。

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