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原発・原爆から見たエネルギー・環境問題とキリスト教の役割 関東学院大で「環境神学」シンポジウム開催

2016年3月24日12時28分 記者 : 行本尚史 印刷
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原発・原爆から見たエネルギー・環境問題とキリスト教の役割 関東学院大で「環境神学」シンポジウム開催
公開シンポジウム「原発・原爆から見たエネルギー・環境問題とキリスト教の役割―『環境神学』の構築と課題(4)」で講演に耳を傾ける参加者たち=19日、関東学院大学金沢八景キャンパスで

関東学院大学キリスト教と文化研究所(神奈川県横浜市)は19日、東日本大震災からどのように回復、再生すべきか、どのような社会システムを構築したらよいのかを基本的に考え直し、キリスト教の役割をあらためて考えようと、同大学金沢八景キャンパスで公開シンポジウム「原発・原爆から見たエネルギー・環境問題とキリスト教の役割―『環境神学』の構築と課題(4)」を開催した。

最初に発題した小林孝吉氏(神奈川大学常務理事、文芸評論家、「千年紀文学」編集人、「神奈川大学評論」創刊以来編集専門委員)は、「『3・11』と内村鑑三の再臨信仰―原発と原爆の文学とともに―」と題して講演した。

原発・原爆から見たエネルギー・環境問題とキリスト教の役割 関東学院大で「環境神学」シンポジウム開催
「『3・11』と内村鑑三の再臨信仰―原発と原爆の文学とともに―」と題して講演を行う小林孝吉氏

「文明史的転換点といわれた2011年3月11日の東日本大震災と福島第一原子力発電所のメルトダウン事故から、すでに5年がたった。この間、原発事故の収拾はつかないまま川内、高浜原発は再稼働し、いまだに故郷へ戻れない多くの東北の人たちがいる」と、小林氏は講演のレジュメに記していた。ただし、高浜原発3号機は10日に、4号機は2月29日に停止している。

「文学は、原発と原爆をともに核の問題として、どのように描いてきたのだろうか。原発の文学から原爆文学をたどるとともに、『3・11』以後の希望を見つめ直してみたい。そのとき、明治初期に札幌農学校でキリスト教と出会い、生涯二つの『J』(イエスと日本)に生きた一キリスト者・内村鑑三が到りついた『再臨信仰』は、この困難に満ちた未来社会を永遠に照らしている」と、小林氏はそのレジュメで述べていた。

小林氏は、1. 「3・11」から5年―2万人の死者とともに、2. 原発と原爆の文学―フクシマからヒロシマ・ナガサキへ、3. 内村鑑三―一キリスト者の生涯、4. 内村鑑三と再臨信仰―再臨と宇宙の完成、5. ポスト・フクシマの希望、という骨子で講演を展開した。

原発・原爆から見たエネルギー・環境問題とキリスト教の役割 関東学院大で「環境神学」シンポジウム開催
小林孝吉氏の近著『原発と原爆の文学―ポスト・フクシマの希望―』(菁柿堂、2016年3月)、『内村鑑三 私は一基督者である』(御茶の水書房、2016年1月)

近著に『原発と原爆の文学―ポスト・フクシマの希望―』(菁柿堂、2016年3月)、『内村鑑三 私は一基督者である』(御茶の水書房、2016年1月)がある小林氏は、「内村論を書いてきて最後にたどり着いたのは、『イエス・キリストは来りつつある』。この言葉だった。現在来りつつある。そして歴史の中でも来りつつある。未来においても来りつつあるとしたら、これからの社会に、そして死者たちとの再会、そういう未来への希望をここから持つことができるのではないか」と述べた。

「そしてそのことが内村の再臨の一番中心の部分。希望の中の希望、あるいは福音の中の純福音というのは、内村鑑三の再臨信仰の中にあるのではないか。一キリスト者として生きたいというのが、最後まで彼の信仰の姿勢だった」と続けた。

小林氏は、「原発と原爆の問題から3・11以後の問題、未来の問題を考えるときに、内村の再臨信仰は大きな希望になり可能性になっていくのではないかと思う。そういう意味では、再臨は今日テーマになっている環境問題、あるいは環境神学、そういう信仰の源にあるものとつながっていくのではないか」と結んだ。

原発・原爆から見たエネルギー・環境問題とキリスト教の役割 関東学院大で「環境神学」シンポジウム開催
「環境神学から見た原発・エネルギー・環境問題のシステム分析と政策構想」と題して講演を行う安田八十五(やそい)氏

次に、関東学院大学経済学部前教授(環境政策学者、工学博士)でキリスト教と文化研究所客員研究員の安田八十五(やそい)氏は、「環境神学から見た原発・エネルギー・環境問題のシステム分析と政策構想」と題して講演した。

2012年に行った東日本大震災の東北現地調査についてスライドの写真を使って説明するとともに、東日本大震災をどう受け止めるかについて、「想定外」の東日本大震災は発生確率の分からない「不確定性」の三類型(リスク・不確実性・無知)のうち、発生状態そのものが未知であり、事前に計算できない無知のケースに相当するとし、科学や政策の対応ができていなかったため、政策科学的なアプローチが必要だと述べた。

安田氏はまた、原発安全神話の崩壊について、原子力村の陥穽(かんせい、落とし穴のこと)は「政官財界+学界+マスコミ界」の「五位一体構造」が主たる要因であるとし、その主な原因として社会システムの依存症としての「関係依存症」を挙げた。

東京大学地震研究所元所長でプロテスタント信徒でもある河角廣(ひろし)元教授による関東大震災級大地震「69年周期説」は当たらず、「第二次関東大震災」は起きなかったが、東日本大震災が起きてしまったため、「地球科学は残念ながら社会問題の中で使えるほど進んでいない」と安田氏は語った。

しかし、安田氏は2008年9月以降に発生する大地震を「第三次関東大震災」と呼び、神奈川県横須賀市にある米海軍基地の原子力空母(ロナルド・レーガン)がメルトダウン(炉心溶融)を起こした場合、関東学院大学金沢八景キャンパスを含む8キロ圏内は100パーセント致死すると警告する。そして東京湾における大地震・大津波・原発災害などのリスクが高まる可能性を指摘した。

安田氏は、一番危険性が高いのは三浦半島といわれており、断層群の将来の地震発生確率が上昇する可能性を政府調査委員会が発表していると述べ、三浦半島で大地震が発生した場合のシミュレーションとして、米国海軍原子力空母の原子炉が爆発もしくはメルトダウンし、炉心にたまった放射性物質が放射能雲となって運ばれ、風下数十キロの住民へ放射能被害や死の灰の降下、都市活動や市民活動が完全に麻痺状態になるという最悪のことが起こり得ると指摘した。

さらに、安田氏は2011年度から過去3回、3年間にわたって行われた公開シンポジウムを振り返った。(所報『キリスト教と文化』第11号[2012年3月発行]、第12号[2013年3月発行]、第13号[2014年3月発行]、詳細はこちら

原発・原爆から見たエネルギー・環境問題とキリスト教の役割 関東学院大で「環境神学」シンポジウム開催
『キリスト教と文化』第13号(関東学院大学キリスト教と文化研究所所報・2014年度)と同号に収録の研究論文「原発・エネルギー・環境問題とキリスト教の役割―『環境神学』の構築と課題(3)―」(安田八十五・山脇直司・劉庭秀)の別刷り

元々理工科系出身の研究者でありカトリック信徒でもある安田氏は、氏が独自に開発した「神の存在の数学的証明」についての安田理論を使用して説明し、「無限集合である神が、無限部分集合である聖霊を有限部分集合である人間イエス・キリストに送り、人間イエスを神化した。無限集合である神は、神化した人間イエス・キリストを通じて、無限部分集合である聖霊を送る機能をお与えになった」などと述べた。安田氏は『キリスト教と文化』第10号(2012年3月)の中で、「神の存在と役割に関する科学的分析:神の存在に関する数学的証明の言葉による説明」という特別報告論文を公表している。

その中で安田氏は、「大災害問題のようなその発生メカニズムが自然科学的に解明されていない問題においてこそ、本稿で展開した数理神学的なアプローチが有効になり得る。人類は、宇宙やさらにそれを超えた世界に関しては殆(ほとん)ど無知であると言っても言い過ぎではない。『神の働き』を正確に理解して初めて本当のことが分かると言える」と結論付けている。

その後、小林氏が安田氏に対し、「イエス・キリストの贖罪(しょくざい)の十字架・復活・昇天とその後の再臨をどう考え、内村鑑三が言った『宇宙の完成』をどう考えるか」と質問すると、安田氏は「どうやって数学的に説明できるかきちんと考えてみたい」と答えた。

続いて行われた質疑応答で、参加者からは、「原爆・原発のカタストロフィーからなぜ再臨の希望と完成へと百八十度転換したのか」「再臨によって正されるときの人間の能動性とは」「信仰のない者への再臨信仰の普遍化をどう考えるか」、再臨信仰が戦前の天皇制の下でキリスト教への弾圧の理由になったこと、創世記2章15節における「耕す」ことやローマ書8章にある新しい世界の再創造に向けた産みの苦しみから環境問題を捉える観点に関する内村鑑三の理解、内村鑑三の『デンマルク国の話』にあるエネルギーについての講演との関連性を問う質問などが出された。

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