教皇フランシスコとモスクワおよび全ロシアのキリル総主教の共同宣言

2016年2月18日21時42分 記者 : 行本尚史 印刷
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+教皇フランシスコとモスクワおよび全ロシアのキリル総主教の共同宣言全文
共同宣言に署名する、ローマ・カトリック教会の教皇フランシスコ(中央左)と、ロシア正教会のモスクワおよび全ロシアのキリル総主教(中央右)(写真:ロシア正教会)
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以下は、12日にローマ教皇フランシスコとモスクワおよび全ロシアのキリル総主教が、キューバの首都ハバナで署名した共同宣言の全文の公式な英訳を、本紙が非公式に日本語訳したものである。ロシア正教会の公式サイトにあるロシア語版はこちら。なお、新約聖書の引用箇所や用語の日本語が両者で異なる部分については、正教会訳/新共同訳、正教会/カトリック教会の順に両方とも併記した。

教皇フランシスコとモスクワおよび全ロシアのキリル総主教の共同宣言

「願ハクハ我等ノ主イイススハリストスノ恩寵、神父ノ仁愛、聖神ノ交親ハ、爾等衆ト偕ニ在ランコトヲ」(コリンフ後書第十三章十三節、正教会訳)/「主イエス・キリストの恵み、神の愛、聖霊の交わりが、あなたがた一同と共にあるように」(コリントの信徒への手紙二13章13節、新共同訳)

1. 全ての賜物が由来する父なる神の御心により、主イイスス・ハリストス/イエス・キリストの御名により、そして慰め主である聖神(聖霊)の助けをもって、私たち、教皇フランシスコと、モスクワおよび全ロシアのキリル総主教は、本日、ハバナで会談した。史上初のこの会談について、私たちは、三位一体において光栄/栄光を受けられた、神に感謝する。

率直に、両教会の互いの関係や私たちの信徒の重大な問題、そして人間の文明が持つ進展の見通しについて議論しようと、「口ヲ以テ口ニ對ヒテ言ハンコト」(イオアン第二公書十二節、正教会訳)の/「話し合う」(ヨハネの手紙二12節、新共同訳)ために、キリスト教の信仰のうちにお互いに出会う兄弟のように、私たちは喜びをもって会談を行った。

2. 私たち兄弟の会談は、北と南、東と西の交差点であるキューバで行われた。「新世界」が持つ希望と、20世紀の歴史の劇的な出来事の象徴である、この島から、ラテンアメリカや他の大陸の全ての人々に、私たちは自らの言葉を向けて言う。

キリスト教の信仰がここで劇的な形で成長しつつあることは、喜びの源である。何百万人もの人々の個人的な体験に根ざした、ラテンアメリカの力強い宗教的な潜在力や、その何世紀にもなるキリスト教の伝統は、この地域のための素晴らしい未来の誓いである。

3. 「旧世界」の長年にわたる争いから離れて会談をすることにより、私たちは特別な切迫感をもって、私たちにある希望について世界に「溫柔ト敬虔トヲ以テ」/「穏やかに、敬意をもって」説明するよう招かれているカトリックと正教徒が共に働く必要性を体験している(ペトル前公書、第三章十五節、正教会訳、ペトロの手紙一3章15、16節、新共同訳を参照)。

4. 私たちは唯一の御子がこの世に来られたことから与えられた賜物について、神に感謝する。私たちはキリスト教の最初の千年間における同じ霊的伝統を共有している。この伝統の証人たちは、至聖生神女/神の最も聖なる母である童女マリヤ/処女マリア、そして私たちが崇敬する聖人たちである。彼らの中には、ハリストス/キリストに対する自らの忠実さを証しし、「キリスト教徒の種」となった、数えきれないほどの致命者/殉教者たちがいる。

5. 初めの10世紀に共有されたこの伝統にもかかわらず、千年近く、カトリックと正教徒は領聖/聖体拝領を共にすることを奪われてきた。私たちは古くからのそして最近の対立によって引き起こされた傷によって、父・子・聖神/聖霊の三位一体である、神への自らの信仰の理解と表現において、自らの先祖たちから受け継いできた違いによって、分断されてきた。「願ハクハ皆一ト爲ラン、父ヨ、爾ガ我ニ在リ、・・・願ハクハ彼等モ我等ニ在リテ一ト爲ラン」(イオアン福音第十七章二十一節、正教会訳)「父よ、あなたがわたしの内におられ、わたしがあなたの内にいるように、すべての人を一つにしてください。彼らもわたしたちの内にいるようにしてください」(ヨハネによる福音書17章21節、新共同訳)という、救世主ハリストス/キリストの祭司の祈りにもかかわらず、一致の喪失や人間の弱さの結果そして罪によって、私たちは痛みを受けている。

6. 多くの障害が永続していることを念頭に置きつつ、私たちは自らの会談が、ハリストス/キリストが祈った、神の御心であるこの一致を、あらためて確立することに貢献できるものとなるよう望む。私たちの会談が、世界中のキリスト教徒に新たな熱情をもって主の全ての弟子たちの完全な一致のために主に祈るための励みとならんことを。私たちの言葉だけでなく形のある行為を切望している世界において、この会談が善意ある全ての人々の希望のしるしとならんことを!

7. 私たちが受け継いで来た歴史的な相違点を克服するために必要なことに全て着手するという自らの決意のうちに、私たちはハリストス/キリストの福音と、最初の千年間における教会の共通の遺産を証しし、現代世界の課題に共に対応していくための自らの努力を合わせたい。正教徒とカトリックはこれが可能かつ必要であるそれらの領域において一致して証しをすることを学ばなければならない。人間の文明は画期的な変化の時期に入った。キリスト教徒としての私たちの良心と牧会/司牧上の責任によって、共通の対応を必要とする課題に直面している私たちは、受け身的ではいられないのである。

8. 私たちの視線はまずキリスト教徒が迫害の犠牲となっている世界の地域に向けられなければならない。中東や北アフリカの多くの国々において、ハリストス/キリストにある私たちの兄弟姉妹の家族や村々および都市全体が完全に根絶されている。彼らの教会は野蛮にも荒らされ略奪されて、彼らの聖器物/聖具が汚されたり、彼らの記念物が破壊されている。痛みをもって、私たちはシリアやイラク、そして他の中東諸国における情勢や、私たちの信仰が最初に広められそこに使徒の時代からキリスト教徒たちが住んできた土地からの彼らの大規模な出国を気に掛けるよう、他の宗教共同体と共に呼び掛ける。

9. 私たちは、中東からキリスト教徒がさらに排除されるのを防ぐために緊急に行動するよう、国際社会に呼び掛ける。迫害されているキリスト教徒を守る私たちの声を上げるに当たって、私たちは、同じく内戦や混沌およびテロリストの暴力の犠牲者になった他の宗教的伝統の信者たちが体験している苦しみへの自らの憐れみを表明したい。

10. シリアやイラクにおける暴力で何千人もの犠牲者たちがすでに命を奪われてきており、それによって他の何百万人もの多くの人たちが家も食べるものもないままとなっている。私たちは、暴力やテロリズムの終結を求め、同時に、対話を通じて市民の平和へと早急に戻すよう、国際社会に強く要請する。大規模な人道援助を、苦しんでいる人々や隣国での安全を求めている多くの難民に確保しなければならない。

私たちは、2013年4月に捕らえられたアレッポのブーロスおよびヨハンナ・イブラヒム府主教を含む、誘拐された人たちの運命に影響力をもたらすことができる全ての人たちに対し、彼らの速やかな解放を確実にするためのあらゆる努力を行うよう呼び掛ける。

11. 多様な住民、教会や宗教同士の友愛の共存が強められ、難民が自らの故郷に帰れるようにし、傷が癒やされ、そして殺された罪のない人たちの魂が安らかに眠れるように、私たちは救世主ハリストス/キリストに自らの祈りをささげ、「正義が造り出すもの」(イザヤ書32章17節、新共同訳)である中東の平和が戻るよう求める。

私たちはこれらの紛争に関わっている全ての地域に向けて、善意を示して交渉のテーブルに参加するよう、熱く訴えて言う。同時に、国際社会は、共通の共同による調整された行動を通じてテロリズムを終わらせるために、あらゆる可能な努力に着手しなければならない。私たちは、テロリズムに対する闘いに関わっている全ての国々に対し、責任ある慎重な行動を呼び掛ける。私たちは全てのキリスト教徒と神の全ての信者に対し、神の被造世界を破壊から守り新しい世界大戦を認めないために、この世界の摂理である創造主に熱心に祈るよう強く勧める。確固たる永続的な平和を確実にするために、私たちの主イイスス・ハリストス/イエス・キリストの福音に基づいて、私たちを結び付ける共通の価値を再発見する具体的な努力に着手しなければならない。

12. 私たちは、ハリストス/キリストの否定よりも死を選んで、自らの命を犠牲にして、福音の真理を証しした人たちの殉教を前に、頭を垂れる。私たちは、さまざまな教会に所属しつつも彼らの共通の苦しみによって一致している、現代におけるこれらの殉教者たちが、キリスト教徒の一致の誓いであると信じる。「至愛ノ者ヨ・・・ハリストスノ苦ニ興ルニ因リテ喜べ、其光榮ノ顯現ノ時二モ喜ビテ樂マン爲ナリ」(ペトル前公書第四章十二、十三節、正教会訳)/「愛する人たち・・・キリストの苦しみにあずかればあずかるほど喜びなさい。それは、キリストの栄光が現れるときにも、喜びに満ちあふれるためです」(ペトロの手紙一4章12、13節、新共同訳)という使徒の言葉が向けられているのは、ハリストス/キリストのために苦しんでいるあなた方に対してである。

13. 私たちの不穏な時代において宗教間対話は必要不可欠である。宗教の諸真理についての理解の違いは、異なる諸宗教の人々が平和と調和のうちに生きる妨げとなってはならない。私たちの今日の文脈において、宗教指導者たちは他の宗教的伝統に属している人たちの信念を尊重する精神のうちに自らの信者たちを教育するという特別な責任を持っている。宗教的な標語で犯罪行為を正当化する試みは全く受け入れることができない。神の御名において犯罪を犯すことはできないのは、「蓋神ハ亂レノ神ニ非ズ、乃平安ノ神ナリ」(コリンフ前書第十四章三十三節、正教会訳)/「神は無秩序の神ではなく、平和の神だからです」(コリントの信徒への手紙一14章33節、新共同訳)。

14. 信教の自由という主要な価値を確認するに当たって、私たちは、かつて無神論者の体制によって何十年も支配されていた、東ヨーロッパの他の多くの国々と共にロシアのキリスト教信仰の今日における空前の再生について、神に感謝する。今日、闘争的な無神論の鎖は打ち砕かれ、そして多くの場所でキリスト教徒たちは今や自由に自らの信仰を告白することができる。何百もの修道院や神学院と共に、何千もの新しい教会が過去四半世紀にわたって建てられた。キリスト教の共同体は慈善の援助や社会開発の分野において顕著な働きを請け負っており、欠乏のうちにある人たちに多様化した形の支援を提供している。正教徒とカトリックは並んで活動していることが多い。福音の価値を証ししつつ、彼らは人間の共存が持つ共通の霊的基礎の存在を証明しているのである。

15. 同時に、私たちは、キリスト教徒がますます信教の自由や自らの信念を証しし、そしてそれらに従って生きる権利に対する制限に直面している多くの国々の状況を憂慮している。とりわけ、私たちは幾つかの国々が世俗化された社会へと変容することが、神とその真理へのあらゆる言及から引き離されて、信教の自由に対する重大な脅威となっていることに気付いている。ある政治勢力が、しばしば非常に攻撃的な世俗主義的イデオロギーに導かれて、キリスト教徒を市民生活の周縁へと退けるとき、キリスト教徒の公然とした差別とまではいかなくとも、彼らの権利が今日削減されていることは、私たちにとって憂慮の源泉である。

16. 何世紀もの血に染まった紛争の後に始まった、ヨーロッパの統合の過程は、平和と安全を保証するものとして、多くの人々に希望をもって歓迎された。しかしながら、宗教的な複数のアイデンティティーの尊重に欠けた統合に対しては警戒を求める。私たちの文明に対する他の諸宗教の貢献に対して開かれたままでありつつも、ヨーロッパはそのキリスト教の起源に対して忠実であり続けなければならないというのが私たちの信念である。2千年のキリスト教の伝統によって形作られた、ヨーロッパがその魂を保つことができるように、私たちは東西ヨーロッパのキリスト教徒に対し、ハリストス/キリストと福音に対する彼らの共通の証しにおいて一致するよう呼び掛ける。

17. 私たちの視線はまた、人類の物質的な富が増大する一方で極端な欠乏と貧困のうちに生きている、重大な困難に直面している人たちにも向けられている。私たちは富裕な国々の門戸を叩いている何百万人もの移民や難民の運命に対して無関心のままでいることはできない。一部のより発展した国々の容赦なき消費主義は、私たちの地球の資源を徐々に枯渇させつつある。物質財の分配における不平等の増大は、台頭した国際秩序についての不正義という感情を増大させている。

18. キリスト教会は正義や人々の諸伝統の尊重、そして苦しんでいる全ての人々に対する真の連帯の要求を防護するよう招かれている。私たちキリスト教徒は次のことを忘れてはならない。「神ハ世ノ愚ナル者ヲ選ベリ、智ナル者ヲ愧シメン爲ナリ、神ハ世ノ賤シキ者、藐ンゼラルル者、有ルナキガ如キ者ヲ選ベリ、有ル者ヲ廢セン爲ナリ、此レ凡ノ肉ガ神ノ前ニ誇ラザラン爲ナリ」(コリンフ前書第一章二十七~二十九節、正教会訳)/「神は知恵ある者に恥をかかせるため、世の無学な者を選び、力ある者に恥をかかせるため、世の無力な者を選ばれました。また、神は地位のある者を無力な者とするため、世の無に等しい者、身分の卑しい者や見下げられている者を選ばれたのです。それは、だれ一人、神の前で誇ることがないようにするためです」(コリントの信徒への手紙一1章27~29節)

19. 家族は人間生活と社会の自然な中心である。私たちは多くの国々における家族の危機について憂慮している。正教徒とカトリックは家族という同じ概念を共有しており、お互いの交流において配偶者の忠実さや、生殖への開放性と彼らの子どもたちの教育、世代間の連帯、そして最も弱い人たちの尊重を証明することで、それが神聖さの道であることを証しするよう招かれている。

20. 家族は、男性と女性の自由に与えられた忠実な愛の行為である結婚に基づいている。彼らの一致を確認し賜物としてお互いを受け入れ合うよう彼らに教えるのは、愛である。結婚は愛と忠実さの学校である。結婚における男性と女性の明確な使命として、聖書的な伝統において神聖なものとされた、父性と母性の概念が、人々の良心から追いやられてしまった一方で、他の形の同居がこの結合と同じ程度に位置付けられてきてしまったことを、私たちは遺憾に思う。

21. 私たちは侵すことのできない生存権を全ての人々に呼び掛ける。何百万人もの人たちがこの世界に生まれるという権利そのものを否定されている。生まれてこない人たちの血が神に向かって叫んでいる(創世記4章10節を参照)。いわゆる安楽死の登場によって、高齢者や障がい者は自分たちが自らの家族や社会全般の重荷であると感じ始めるようになっている。私たちはまた、生体医療の生殖技術の発達についても憂慮しており、それは人間の生命の操作が、神に似せて創られた人間存在の基礎に対する攻撃を表すからである。私たちはまた、創造主のご計画に従って生み出された個人の尊厳の尊重に基づいて、キリスト教の道義的な原則の不変性を思い起こさせることは私たちの義務であると信じる。

22. 今日、特別な形で、私たちは若いキリスト教徒に向かって言う。あなた方、若い人たちには、「爾ノ銀ヲ地ニ藏」(マトフェイ福音第二十五章二十五節、正教会訳)/「あなたのタラントンを地の中に隠」(マタイによる福音書25章25節、新共同訳)すのではなく、この世界においてハリストス/キリストの真理を確認するために神があなた方にお与えくださった全ての能力を用い、神の愛と人の隣人の愛という福音的な戒めをあなた方の生活の中で具体化するという務めがある。現代の世俗的な規範からしばしばほど遠い、神の真理を守って、流れに逆らうことを恐れてはならない。

23. 神はあなた方一人一人を愛しておられ、ご自身の弟子そして使徒となることをあなた方に期待しておられる。あなた方の周りの人たちが「爾等ノ善キ行ヲ見テ、天ニ在ス爾等ノ父ヲ讃榮セン爲」/「あなたがたの立派な行いを見て、あなたがたの天の父をあがめるようになるため」に、世の光となりなさい(マトフェイ福音第五章十四、十六節、正教会訳/マタイによる福音書5章14、16節、新共同訳を参照)。キリスト教信仰のうちにあなた方の子どもたちを育て、「値貴キ眞珠」(マトフェイ福音第十三章四十六節、正教会訳)/「高価な真珠」(マタイによる福音書13章46節、新共同訳を参照)である、あなた方が自らの両親や先祖から受けた信仰を彼らに伝えなさい。人であり神であるイイスス・ハリストス/イエス・キリストの十字架の上における死という犠牲をもって、「蓋爾等ハ價ヲ以テ買ハレタリ」(コリンフ前書第六章二〇節、正教会訳)/「あなたがたは、代価を払って買い取られた」(コリントの信徒への手紙一6章20節、新共同訳)ということを覚えておきなさい。

24. 正教徒とカトリックは最初の千年間において教会が共有した伝統によってだけでなく、今日の世界においてハリストス/キリストの福音を説くという使命によっても一致している。この使命は、キリスト教共同体の成員に対するお互いの尊重を必要とし、いかなる形の改宗主義をも排除する。私たちは競争相手ではなく兄弟であり、そしてこの概念は、外の世界に向けられた行為とともに、全ての私たちのお互いの行為を導くものでなければならない。私たちは全ての国々にいるカトリックと正教徒に対し、平和と愛のうちに共に生きることを学び、「互ニ意ヲ同ジクスルコトヲ賜ハン」(ロマ書第十五章五節)/「互いに同じ思いを抱かせ」(ローマの信徒ヘの手紙15章5節)るよう、強く求める。従って、一つの教会からもう一つの教会へと移るよう駆り立てるために忠実でない手段が用いられ、彼らに対して彼らの信教の自由や伝統を否定することは受け入れられない。私たちは、「且我ガ勤メテ福音セシハ、ハリストスノ名ノ已ニ稱へラレシ處ニ在ラズ、他人ノ基ニ建テザラン爲ナリ」(ロマ書第十五章二〇節、正教会訳)「このようにキリストの名がまだ知られていない所で福音を告げ知らせようと、わたしは熱心に努めてきました。それは、他人の築いた土台の上に建てたりしないためです」(ローマの信徒への手紙15章20節、新共同訳)という、使徒パウェル/パウロの教訓を実践するよう求められているのである。

25. 私たちの望みは、ギリシャ・カトリックと正教徒の間の緊張が存在するところならどこでも、私たちの会談が和解にも貢献するものとなってほしいということである。一方の共同体がその教会から分離してもう一方に対して結合することとして理解されている「ユニアティズム」という過去の手法は、一致を再び確立するための方法ではないことが、今日明らかである。にもかかわらず、これらの歴史的な状況の中で登場した教会共同体には、隣人と平和のうちに生きることを求める一方で、存在し自らの信者が持つ霊的なニーズを満たすために必要なあらゆることを請け負う権利がある。正教徒とギリシャ・カトリックは和解やお互い受け入れられる形での共存を必要としている。

26. すでに多くの犠牲者をもたらし、数えきれないほどの傷を平和な住民に負わせ、社会を深い経済的かつ人道的な危機の中へと投げ込んでしまったウクライナにおける敵対関係を、私たちは遺憾に思う。私たちはこの紛争に関わる全ての地域に対し、慎重さや社会的連帯、そして平和の構築を目的とした行動を求める。私たちはウクライナにある自らの教会に対し、社会的調和に向けて働き、対立に参加するのを控え、そしてこの紛争がどんなにさらに発展してもそれを支えたりしないよう求める。

27. 私たちの望みは、私たちのキリスト教徒としての兄弟愛がますます明らかになるような形で、ウクライナにおける正教徒同士の分裂が、既存の教会法上合法な規範を通じて克服され、ウクライナの全ての正教徒であるキリスト教徒が平和と調和のうちに生き、そしてこの国にあるカトリックの共同体がこれに寄与することである。

28. 多様でありながら共通の運命によって一致してもいる、現代の世界において、カトリックと正教徒は、「世ガ・・・信ゼン爲」(イオアン福音第十七章二十一節)「世は、あなたがわたしをお遣わしになったことを、信じるようにな」るため(ヨハネによる福音書17章21節、新共同訳)に、人格の道義的な尊厳と真正な自由を共に証しするために、救いの福音を宣べ伝えることにおいて、兄弟らしく共に働くよう求められている。この世界は、その中で人間存在の精神的支柱が次第に消えつつあり、個人的および社会的な生活のあらゆる領域において注目せずにいられないようなキリスト教徒の証しを私たちから待っているのである。人類の未来の多くは、この困難な時代において真理の聖神/聖霊に対する共通の証しをする私たちの能力にかかるものとなるであろう。

29. 神の真理と救いの福音に対する私たちの大胆な証しが、「小キ群ヨ、懼ルル勿レ、蓋爾等ノ父ハ爾等ニ國ヲ賜ハンコトヲ喜ベリ」(ルカ福音第十二章三十二節、正教会訳)「小さな群れよ、恐れるな。あなたがたの父は喜んで神の国をくださる」(ルカによる福音書12章32節、新共同訳)という、絶えることのない約束で私たちを強めてくださり、人であり神であり、私たちの主であり救世主であるイイスス・ハリストス/イエス・キリストによって保たれんことを! ハリストス/キリストは歓喜と希望の源泉である。彼への信仰は人間の生活を変貌させ、それを意味で満たすのである。これが、ペトル/ぺトロが自らの言葉において言及している、全ての人たちの体験から生まれた信念である。すなわち、「爾等素民ニ非ザリシガ、今ハ神ノ民ナリ、素矜恤ヲ蒙ラザリシガ、今ハ 矜恤ヲ蒙リシ者ナリ」(ペトル前公書第二章十節、正教会訳)/「あなたがたは、『かつては神の民ではなかったが、今は神の民であり、憐れみを受けなかったが、今は憐れみを受けている』のです」(ペトロの手紙一2章10節、新共同訳)

30. 私たちの会談の間に明らかにされた相互理解という賜物に対する、恵みに満たされた感謝をもって、私たちは、この古(いにしえ)の祈りの言葉で、至聖生神女/神の最も聖なる母に祈り、希望を持ってより頼もう。「神の聖なる母よ、汝の慈しみの庇護の下に、われらは避け所を求めん」。最も聖なる不可分の三位一体の光栄/栄光のために、神の一つの民の平和と調和のうちに、神ご自身の時に、彼らが再び一つとされ、福(さいわ)いなる童貞女マリヤ/処女聖マリアが、ご自身の執り成しを通じて、ご自身を崇敬する全ての人々に友愛を起こしてくださるように。

モスクワおよび全ロシアのキリル総主教     ローマ司教・カトリック教会の教皇フランシスコ

2016年2月12日、ハバナ(キューバ)にて

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