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高山右近の故郷・高槻で欧州中世の聖女ヒルデガルトの記念祭 古楽演奏や舞台パフォーマンスなど(動画あり)

2015年10月29日16時58分 記者 : 土門稔 印刷
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+高山右近の故郷・高槻で欧州中世の聖女ヒルデガルトの記念祭 古楽演奏や舞台パフォーマンスなど
「みつゆき with Lyres and Harps『consort Harmonia』」のメンバーによるライアーとハープの二種類のたて琴を使った演奏=9月22日、カトリック高槻教会(大阪府高槻市)で
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カトリック高槻教会(大阪府高槻市)で9月22日、「ヒルデガルト記念祭 中世・祈りの響き」と題して、中世古楽のコンサートや舞台パフォーマンスが行われた。

高槻は、親子でキリシタン大名だったことで知られる高山友照・右近が領主となり、布教が行われた地だ。1580年代の最盛期には、領内に20カ所の教会があり、領内の人口の6割に当たる1万8千人もがキリスト教徒だったという。高山右近はその後、豊臣秀吉のバテレン追放令にあっても信仰を棄てず、江戸幕府が成立すると、禁教令によってフィリピン・マニラに国外追放され、現地で亡くなったことで知られている。

今回の会場となったカトリック高槻教会でも、敷地内には高山右近を顕彰した石碑が建てられていた。現在、日本のカトリック教会では、高山右近を、信仰を貫いた殉教者として「福者」に認定するようにローマ教皇庁に働きかけており、年内か来年初めにも正式に福者として認定される見通しだという。

高山右近の故郷・高槻で欧州中世の聖女ヒルデガルトの記念祭 古楽演奏や舞台パフォーマンスなど
カトリック高槻教会の敷地内にある高山右近を顕彰する石碑

さて、この日は聖堂の前には、欧州中世の騎士の甲冑(かっちゅう)をまとった男性3人が! 西欧中世史実践研究会「アヴァロン」のメンバーたちだ。会場に入る前から思わず中世気分(!?)に胸が高鳴る。

今回のイベントは、カトリック教会の聖女として知られるヒルデガルト・フォン・ビンゲン(1098~1179)を記念したもの。ヒルデガルトは、中世ドイツのベネディクト会系女子修道院長で、医学や薬草学に詳しくドイツ薬草学の祖ともされ、欧州中世の最大の賢女とも評価されているという。また詩人、作曲家としても知られ、その聖歌は現在も頻繁に演奏されているそうだ。2012年には、当時の教皇ベネディクト16世によって女性としては4人目の「教会博士」の称号が与えられた。

コンサートの司会を務めた清水ひさこさんの説明によると、ヒルデガルトは1098年、ドイツのベルマースハイムという土地に生まれた。幼い頃から体が弱かったが、鋭い観察力を持ち、しばしば幻視体験をしたという。両親は初め、うわごとだと相手にしていなかったが、次第に娘には何かの力があると気付き、18歳で生涯を神にささげるべく修道女となった。自然や動物に触れる生活を送りながら、女性には教育はいらないとされていた時代に、ラテン語と楽器を学び、多くの歌を作った。

高山右近の故郷・高槻で欧州中世の聖女ヒルデガルトの記念祭 古楽演奏や舞台パフォーマンスなど
会場となったカトリック高槻教会。聖堂の前には、欧州中世の騎士の甲冑(かっちゅう)をまとった男性3人が。

また、野山で薬草を集め、教会を開放して薬局を開き、多くの人々を癒やした。ヒルデガルトが記した薬草学の書物は20世紀になって再発見されてから再評価が進み、2012年の「教会博士」授与につながったという。

清水さんによる説明の後、「ヒルデガルトの生きた中世の音楽」と題して、京都で中世の音楽を演奏する活動をしている古楽アンサンブル・サリーガーデンの近藤明子さんと山田夕子さんが、12世紀の歌曲を中心に4曲を演奏した。

バスリコーダーとハープの演奏に合わせて、古いフランス語の歌詞で歌われた「Ja nuls homs pris(囚=とら=われ人はいつも)」は、第3次十字軍で活躍し、獅子心王と呼ばれたリチャード1世(1157~99)ゆかりの曲だ。勝利したリチャード1世がエルサレムからの帰途、神聖ローマ帝国内で捕囚の身となっていた際に、おかかえの吟遊詩人がきっと自分の声を聴き付けて居所を探してくれるだろう、と歌った曲だという伝承があるという。

高山右近の故郷・高槻で欧州中世の聖女ヒルデガルトの記念祭 古楽演奏や舞台パフォーマンスなど
古楽アンサンブル・サリーガーデンの近藤明子さん(左)と山田夕子さん

さらに、中世の女性宮廷詩人が、聖母マリアの愛によって支配され、その身をささげたいと願ってやまない心境をせつせつと歌う「Amours, ou trop tart me sui pris(愛が私を支配した)」も演奏された。

続いて、アイリッシュハープ奏者のみつゆきさんが中心となった「みつゆき with Lyres and Harps『consort Harmonia』」のメンバーによる、ライアーとハープの二種類のたて琴を使っての演奏も行われた。

みつゆきさんによると、ライアーは古代ギリシャやエジプト、中近東で使われていたたて琴を再現して、20世紀に入り生み出された楽器だ。スタジオジブリのアニメ映画『千と千尋の神隠し』の主題歌の伴奏でも用いられ、一般にも知られるようになったという。聖書の英語訳の中では、この二種類のたて琴がしばしば使われている記述があるという。

Awake, my soul!
Awake, harp and lyre!
I will awaken the dawn.
(Psalm 57:8, New International Version=NIV)

聖堂では、たて琴で奏でられる荘厳で艶やかな音色に、来場者も静かに耳を傾けた。

「みつゆき with Lyres and Harps『consort Harmonia』」のメンバーによるライアーとハープの演奏

これらの演奏の後には、「ヒルデガルトの苦悩と感動に満ち溢れた物語」と題して、声楽家の一井優希さんと清水ひさこさんの歌と語りに、古楽器奏者 Sally Lunn さんのプサルテリによる演奏で、ヒルデガルトの生涯が演じられ、大きな拍手で沸いた。

高山右近の故郷・高槻で欧州中世の聖女ヒルデガルトの記念祭 古楽演奏や舞台パフォーマンスなど
演奏後には舞台パフォーマンスが行われた。入場する出演者たち。

この日のコンサートを企画したのは、ヒルデガルトフォーラムジャパン。代表の平垣美栄子さんは、ハーブを用いた植物学を学ぶ中でヒルデガルトと出会い、ドイツに留学したという。ドイツでは、生誕900年を迎えた1998年には、その生涯を描いた映画が制作されるなど、ヒルデガルトはよく知られた人物で、没したとされる9月には毎年各地で記念祭が行われるという。

ヒルデガルトへの思いについて平垣さんは、「私は植物学を学ぶ中でヒルデガルトのことを知りました。学ぶうちに音楽、キリスト教信仰、思想などさまざまな面から現在、注目を集めていることを知りました。また、まだ女性の社会的地位が低かった中世という時代に生きた一人の女性の生き方としても近年は注目を集め、研究が行われています。ぜひその魅力をもっと広く知ってもらえたらと思っています」と話してくれた。

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